英国等3国の食品に未承認中国GM米 環境団体、即刻の世界的リコールと選別を要求

農業情報研究所(WAPIC)

06.9.6(最終改訂:9.7)

 グリーンピース・インタナショナルの5日の発表によると、グリーンピースと英国地球の友の検査で、フランス、ドイツ、英国で販売されているバーミセリとビーフンの5つのサンプルが世界のどこでも承認されていない中国の以遺伝子組み換え(GM)米に汚染されていることが発見された。、

 Illegal genetically engineered Chinese rice discovered in Europe,06.9.5
  http://www.greenpeace.org/international/press/releases/illegal-genetically-engineered
 製品名等を含む詳細は→http://www.greenpeace.org/raw/content/international/press/reports/IllegalChinaGErice.pdf

 グリーンピースによると、このGM米は害虫抵抗性を与えられた米で、マウスにアレルギー様の反応をもたらしたという報告のある蛋白質(Cry1Ac )を含む。3人の独立科学者も、グリーンピースが取り上げた健康上の懸念を支持する声明を出したという。

 グリーンピースは、安全性への懸念からこの米は未だ商業栽培を許されていないことから、この汚染は屋外実験で起きたとしている。しかし、2005年のグリーンピースの調査は、中国の研究機関や種子企業は未承認のGM米種子を農民に不法に販売していたことを発見したとも指摘している(→中国で未承認GM米販売  中国米輸出販売にも影響―グリーンピース,05.4.15)。

 いずれにせよ、グリーンピースは米製品はスナック食品、ベビーフード、ビール、ヨーグルトなど非常に多種の食品や飲料にも含まれており、発見された汚染は氷山の一角にすぎないだろうと言い、汚染米がさらにEUに入って来ないよう保証する措置として、即時の世界的リコールと高度な汚染リスクがある国のための予防的スクリーニング・システムの緊急の実施を要請している。そして、ヨーロッパの消費者を保護するために、GM作物を栽培する国にGMフリーの証明を求めることが合理的、コスト効率的で、必要だと言う。

 ネイチャー・ニュースによると、この米の安全性に関しては、食品アレルギー専門のアムステルダム大学の生化学者・Rob Aalberse氏は、リスクは小さいだろう、「現実的リスクがあることを示唆するデータはない」、グリーンピースが引用するマウスでのアレルギー影響を示す研究は、アレルギー性を減らす米を調理しなかったと言っている。

 とはいえ、その彼も、未承認の米が既に中国の多くの人々によって消費されている、真の問題は[汚染の]の封じ込めだ、「屋外実験も一つの問題だが、もし実際に栽培することになれば、封じ込めることは不可能と考える」と言う。 

 Escaped Chinese GM rice reaches Europe,news@nature,9.5
 http://www.nature.com/news/2006/060904/full/060904-5.html

 しかし、現在の中国においても、実験と「実際の栽培」の区別もつかないのが現実だ。国民(特に大都市市民)や科学者の間で食品安全性や環境・農業そのものへの悪影響の懸念が高まっており、近年は農産物輸出へ悪影響への懸念も承認をためらう重要な要因となってきた。EUが米国からの輸入GM大豆で生産される中華ソースの輸入を停止したり、米の世界最大の輸出国・タイがGM米開発を中断するなどの出来事が相次いだためだ。

 したがって、農業部は1996年に発布したGMO規制を改め(2001年5月制定、2002年3月発効)、バイオセーフティー管理を飛躍的に強化した。公衆衛生部も最初のGM食品衛生規則を公布した(2002年7月発効)。昨年末、農業バイテク推進者が期待したGM米の商業栽培承認を見送ったのもそのためだ。しかし、これらの規制の完全実施にはほど遠いのが現実だ。

 例えば、1999-2001年に農家が実際に栽培していた害虫抵抗性ワタの半分は商業栽培のための承認を得ていなかったという調査がある。種子は主に地方の種子企業、農業普及組織、研究機関、小規模業者により農家に配布されていたという(Jikun Huang and Qinfang Wang,Agricultural Biotechnology development and Policy in China,AgbioForum,5-4,2002,p130)。

 問題になった米の屋外実験にしても、これには技術者の管理下で行われる試験場圃場での実験栽培と、農家の圃場で行われる実験栽培(農家は種子を配布されるだけで、自分のやり方で栽培する)が含まれる。米国研究者によると、少なくとも13の実験サイトがあり、規則では各サイトは1000ムー(66.7f)を超えてはならないとされている。

 しかし、この規模では実験とはとても言えない。出来た米を販売しないはずがないだろう。GM農家と非GM農家が受け取った市場価格はほとんど同等だったというから、実際販売されているのだろう(Scott Rozelle et al,Genetically Modified Rice in China:Effects on Farmers-in China and California,Agricultyural and Resource Economics,Sep/Oct 2005)。これは事実上の商業栽培だ。食品汚染は起きるべくして起きた。

  商業栽培は承認しなかったとはいえ、これではGM米汚染は避けられない。今回の事件は、中国の食品輸出に重大な影響を及ぼす可能性がある。政府はGMO規制のあり方への深刻な反省を迫られよう。中国は1980年代初め以来、食料安全保障の改善、持続可能な農業開発、農民所得改善、環境と人間の健康の改善、国際農産物市場での競争力強化を目標に、農業バイテク研究開発に多大な資金と人材を注ぎ込んできた。しかし、このままでは、これらの目標がすべて絵に描いた餅となり、逆に農業バイテクが国益を大きく損なうことになりかねない。

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