米国支援東アフリカGMキャッサバ計画 狙いは米国のバイオエネルギー源探索の疑い

農業情報研究所(WAPIC)

06.9.14

  東アフリカの食料安全保障の改善を助けると喧伝された米国の援助による病気抵抗性遺伝子組み換え(GM)キャッサバ研究計画が、実はトウモロコシに代わる安価な更新可能なエネルギー源を探索する米国の試みではないかと疑われている。アメリカの主導的研究機関であるドナルド・ダンフォース植物科学センターも、このGMキャッサバが収穫損失の主要な原因となっているキャッサバモザイク病(CMD)に弱いことを認めたという。

 Doubts Over Cassava Project,The East African via allAfrica.com,9.12
  http://allafrica.com/stories/200609120828.html

  GMキャッサバは、米国国際開発庁(USAID)が資金を供給するケニア病気抵抗性キャッサバプロジェクトを通して開発された。USAIDは、その目的を、「ケニア農民に収穫を増やし、食料安全保障を改善する遺伝子改変病気抵抗性のキャッサバを開発し、普及させることだ」と述べていた。ところが、今年5月26日、ダンフォースセンターが、CMD抵抗性は7年前に遺伝子操作を通して確立されたものの、「その後抵抗性は失われた、植物のDNAに変化が起きた」という声明を出した。

 この研究計画の批判者は、プロジェクトの狙いは食料安全保障ではなく、米国によるトウモロコシよりも安価なエタノール製造原料の探索だった、地域におけるGM作物導入への抵抗を打破しようとする狙いもあると批判している。批判者によると、ダンフォースセンターのクロード・フォーケット博士も、「キャッサバのゲノムシーケンスの取得は野生キャッサバ内の広大な生物多様性を探索するためのプラットフォームを提供する。最終的には、これらの活動はキャッサバを更新可能な価値あるバイオエネルギー源として位置づけることになる」と語っているという。

 さらに、ダンフォースセンターは、他のいくつかの米国研究機関とともに、米国エネルギー省共同ゲノム研究所(DOE-JGI)によるこの植物のゲノム全体を解読するための病気抵抗性キャッサバ開発にかかわっている。DOE-JGI自身、キャッサバは、およそ10億の人々の食料源として世界中で栽培される優れたエネルギー源であり、化石燃料依存を軽減するために世界中で利用される可能性があると認めているという。

 南アのアフリカ生物多様性センターは、これは、「途上国の人々の飢餓と栄養問題に取り組むという以前の約束からの劇的な回れ右」を示すものだと言う。しかし、研究計画支持者は、批判者は、計画が南アフリカ以外の大部分のアフリカ諸国で論議の的になっている遺伝子組み換えにかかわるということから反対しているだけだと主張する。

 その当否はともかく、病気抵抗性を持つはずだったキャッサバが、一部農場では常に30%もの損失をもたらすというCMDに効かないとすれば、計画が当初の期待を裏切ったことだけは確かだ。

 ダンフォースセンターは、ケニアの3万2000の農家に地域で最も人気の高いキャッサバ品種ーEbwanatarekaーを普及させることから出発し、病気抵抗性キャッサバを東アフリカ全体に広めるという計画を発表していた。そのウエブサイトでは、プロジェクトの目標が達成されれば、CMDのコントロールで20万のケニア・キャッサバ農民とその家族の食料安全保障を高め、キャッサバ収穫を50%増加させる、収量の50%の増加は毎年63万トンの追加食料を生み出すと言っている。さらに、その後はウガンダにも持ち込み、この国の年間キャッサバ生産を60万トン増加させる、両国の受益者総数は100万を超えると述べているという。

 こんな約束が裏切られるとすれば、アフリカ諸国はますます食料安全保障をGM作物 に期待しなくなるだろう。実際、GM技術と無関係なな新たな米品種の採用がアフリカ各地で成果をもたらしつつある。GM技術は、むしろ古臭い、時代遅れの技術とみなされるようになるかもしれない。

 最近の例:Record rice yields for Egypt,FAO,9.5Rwanda: Corika to Champion Rice Growing On Dry Land,The New Times via allAfrica.com,9.12;Uganda: Upland Rice - a Dawn of Hope,The Monitor via allAfrica.com,9.12

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