米連邦地裁 杜撰な環境影響評価で農務省のGMアルファルファ承認は違法 

農業情報研究所(WAPIC)

07.2.14

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、サンフランシスコ連邦地裁が13日、米国農務省(USDA)がモンサント社の除草剤耐性遺伝子組み換え(GM)アルファルファの承認はあり得る環境影響の適切な評価を怠ったことで法律を犯したと決定した。

 USDAは2005年6月にこのアルファルファの一般圃場栽培を承認した。しかし、組み込まれた除草剤耐性を与える遺伝子は人間と家畜に無害であるという理由で、長期で詳細な環境影響評価を無用としての承認だった。

 ワシントンの食品安全センターがこの種子の販売差し止めを求めて提訴していたが、地裁判事は、USDAが花粉を通しての遺伝子の有機あるいは非GMアルファルファへの移転により有機農家の販売や日本のようなGM品種を望まないし国への輸出を傷つける可能性を適切に考慮しなかったと判断した。

 さらに、判事は、このGM作物の栽培がラウンドアップ除草剤(グリホサート)の広範な使用につながり、普通の雑草に除草剤抵抗性を発達させる可能性もUSDAは簡単に否定した、このリスクは大豆やトウモロコシなどの他の作物でも同じ除草剤が広く使われているから一層大きいと語ったという。

 U.S. Agency Violated Law in Seed Case, Judge Rules,The New York times,2.14

 USDAは、昨年8月にも、ハワイ全域での薬品生産GM作物の栽培許可に際して絶滅危惧種への影響の調査を怠ったと、絶滅危惧種法(ESA)違反の判決を受けている(米国連邦地裁 USDAのハワイでの薬品生産GM作物栽培許可は違法の判決(速報),06.8.16)。

 そして、先週は、実験地から拡散して野生種生息地を破壊しており、さらに除草剤の効かない”スーパー雑草”を生み出す恐れがあると批判されていたGMクリーピングベントグラス(除草剤耐性GM草が実験地から拡散 野生種駆逐、”スーパー雑草”の急速な拡散の恐れも,06.8.14)の屋外実験の承認に際しても適切な影響評価を怠ったというワシントン連邦地裁の判決も受けている。

 USDA Faulted On Oversight Of Test Crops,The Washington Post,2.7

 GM作物承認に当たっての米国の環境影響評価への信頼は地に落ちたと言えよう。GM作物の将来を自ら閉ざすことにもなりかねない。