インド 天水依存地域でのBtワタ失敗の研究 70%の農民が借金のカタで土地を失う

農業情報研究所(WAPIC)

07.2.17

  インド・ヒンドゥ紙によると、遺伝子キャンペーン・ディレクターのスーマン・サハイ博士が15日、ジャーナリストに対して、新たな研究がマハラシュトラ州西部・ヴィダルバ地域への殺虫性遺伝子組み換え(GM)Btワタの導入が失敗だったことを明らかにしたと発表した。政府は、ヴィダルバ地域のような天水に依存する地域ではBtワタが機能しないことが分かっていたのに、この地域に導入した。その結果、生産資材コストが増大、もともと借金漬けの地域農家の借金をさらに膨らませた。研究によると、に70%の農民が、どうにも払えないローンの抵当とした土地を失ったという。

 Bt cotton has failed in Vidarbha: study,Hindu,2.16

 近々公刊されるこの研究は、ヴィダルバ地域Btワタがどのように導入されたかを調べるもので、地域の500人のワタ農民とのインタビューに基づく。予備段階のデータでは、Btワタを採用した農民は、非Btワタ農民よりも純所得が低い。

 博士は、Btワタは灌漑地域では良いが、ヴィダルバのような地域に導入すのは間違っていると言う。このような地域では、種子コストを含む資材コストが高く、ニセの種子がいっぱいあり、必要な複雑な管理に関する農民の何の準備もなしにこの技術が採用されたために、好成績が得られなかった。種子ディーラーは必要以上の肥料や農薬の購入を農民に勧奨したから、投入費用が膨らんだ。彼らは、1エーカー(0.4ha)あたり12-15キンタル獲れると保証したが、実際には3-4キンタルしか獲れなかった。平均すると、農民はエーカーあたり1,725ルピーの損失を蒙っており、これではとてもやっていけない。

 しかし、なぜ多くの農民がBtワタに走るのか。研究は、多くの農民が、Bt種子は”政府種子”と信じており、民間が生産し・販売したものだと知らないためにBtワタを採用したことを明らかにした。また、政府はこの技術を積極的に売り込んでいるために農民はこれを受け入れた。地方当局はBtワタの失敗に気づいているけれども、州農業省はその売り込みを続けている。損害の責任は政府にもある。

 博士は、Btワタを長年採用してきた米国や中国では既に害虫に抵抗性が発達していることから、これが長続きはしない技術であるとも指摘する。そして、ワタ農民はこれを必要としてこなかったし、Btワタ遺伝子は90日間しか働かないのに、インドのワタは成熟までに160日かかり、最も重要な時期に作物が害虫から保護されない(インド Btワタが播種後110日で標的害虫に無効化の新研究,05.8.3)とも強調する。

 研究は、Btワタの植物や動物に対するその他の副作用の証拠も集めた。Btワタを収穫した畑で放牧する地域での家畜の死(インドのBtワタ畑の放牧羊・山羊が謎の大量死 NGOはBtワタの安全性に疑念,06.5.22)、ワタ畑で働く婦人による発疹の訴え、マンゴが開花しなかったという報告なである。これらがBtワタ導入と関係があるのかどうかを確認するための試験は行われてこなかった。

 なお、国立栄養研究所が、アンドラ・プラデシュでの羊の死がBtワタ植物物質の消費のためかどうかを調べる研究を行うことに同意したという別の報道がある。

 Toxic studies to be done on Bt cotton,Hindu Business,2.16