インド Btワタが播種後110日で標的害虫に無効化の新研究

農業情報研究所

05.8.3

 インド・マハラシュトラ州・ナグプールに本拠を置く中央綿研究所(CICR)の研究チームが、遺伝子組み換え(GM)Btワタが播種110日後、ワタキバガ (bollworm)に対して無効になることを一連の研究により証明した。これを承認した遺伝子操作承認委員会(GEAC)は、8月10日の会合で、インド誌”Current Science”(7月25日)に発表されたこの研究について議論する。Btワタは望まれる結果を生んでいないと主張してきた民間団体は承認見直しを要求する。”The Financial Express”紙が8月1日付けで報じている(http://www.financialexpress.com/print.php?content_id=97943)。

 この害虫はワタ作に甚大な被害をもたらす。そのために、この害虫を殺す毒素を生み出す土壌バクテリアの遺伝子をGM技術を用いてワタに組み込んだBtワタを利用するインド農民が増えてきた。組み込まれたこの遺伝子は、ワタがワタキバガ に対して毒性を持つCry1Ab蛋白質を生産することを可能にする。それによって、Btワタはこの害虫に対する抵抗性を獲得する。ところが、この最近の研究は、ワタの抵抗力は播種後110日間しか続かず、それ以後はワタキバガの攻撃に曝される恐れがあることを明らかにした。Cry1Abのレベルはワタの成長に連れて低下、110日後には1.9mgの致死レベル以下に落ちることがわかったという。さらに、毒素の発現は、ワタキバガが最も好む花の子房やさやの外皮で相対的に低いことも発見した。

 2003年5月25日の”Current Science”でも農業科学大学の研究チームが類似の研究を発表しており、一研究者は、「抵抗力の低下は、農民が作物を救うために一層多くの化学殺虫剤を使わねばならないことを意味する。Btワタ種子のコストは既に高く、これに農薬のコストが追加される。重い借金が積み重なる」と言う。

 スカンディラバッド・持続可能農業センター(CSA)のGV Ramanjaneyulu博士は、「科学者が毒性発現をコントロールできない事実そのものが、GM技術の不正確さと予見不能性を示している」と語った。CSAは、インドのBtワタ商業栽培を3年ごとに研究しており、すべての結果はBtワタ栽培者が損害を受けたことを証明している、対照的に、非Btワタ栽培農民や有機農法に従い、生物殺虫薬を使っている農民は高収益を得ているという。

 過去3年間、遺伝子キャンペーン、科学・技術・エコロジー研究財団などもNGOが研究を行ってきたが、すべて類似の結果が出ている。しかし、GEACは今年、国の様々な地域で利用される13のBtワタ品種を承認した。ただし、Mech-12 Btは南部全体、Mech-162 Bt Mech-184 Btはアンドラ・プラデーシュで、関係州政府による損害の報告を受けて栽培を禁止した。

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