独農相 GMO承認手続に疑念 新規承認停止を主張 EUのGMO政策に転機か?

農業情報研究所(WAPIC)

07.11.28

 ブリュッセルでの会合に集まったEU27ヵ国の農相の多くが、何はともあれ、最終的には欧州委員会の決定で承認されることになるEU遺伝子組み換え体(GMO)承認手続の修正を要求した。ドイツのホルスト・ゼーフォーファー農相は、この手続が改善されるまで、新たな承認を停止すべきだとまで主張した。ディマス環境担当委員も、欧州委員会内部からは初めて、二種のBt作物承認拒否の声を上げた(EU環境担当相 二種のGM(Bt)トウモロコシ栽培禁止方針を公に確認,07.11.26)。EUのGM作物政策が激動期を迎えたのだろうか。

 EUの現行GMO承認手続においては、新たなGMOは、欧州食品安全機関(EFSA)のリスク評価に基づき、EU政府たる欧州委員会が承認・非承認の決定案を作り、各国代表者で構成される規制委員会の特定多数決で承認の可否が最終的に決定される。ただし、規制委員会の意見が割れ、承認とも拒否とも決定できなければ、決定は閣僚理事会の特定多数決に委ねられる。しかし、ここでも双方が決定に必要な票数を得られなければ、最終的決定は欧州委員会に委ねられる。

 ところが、このような承認手続が始まって以来承認されたGMOの中で、規制委員会、閣僚理事会が承認を決定できた例は一例もない。すべてで意見は割れ、承認とも拒否とも決定できなかった。このように大きく意見が分かれるGMOについて、導入に前向きな欧州委員会がすべての承認を決めた。

 ゼーフォーファー農相は、このような問題についての裁断を政治責任者に委ねるのは”高度に不満足”、医薬品の許可の決定を政治機関がするようなものと言い、当面は承認を停止、手続が適正かどうか見極めるべきと述べたという。イタリア、フランスの農相も類似の考えだった。

 しかし、欧州委員会は手続の見直しには断固反対、決定は科学的意見にのみ基づいていると主張した。フィッシャー・ボエル農業担当委員は、飼料用GM製品の輸入へのヨーロッパの抵抗は養豚や養鶏のコストを高め、食肉産業を危険に曝すと警告したという。

 OGM: l'Allemagne pour un moratoire des autorisations dans l'UE,AFP via Yahoo! Actualités,11.26
 (http://fr.news.yahoo.com/afp/20071126/tsc-agr-bio-env-gov-eur-c2ff8aa.html)
 La fronde contre les OGM reprend vigueur au niveau européen,Le Monde,11.26
 (http://www.lemonde.fr/web/depeches/0,14-0,39-33365736@7-37,0.html)
  European Official Faults Ban on Genetically Altered Feed,The New York Times,11.27
  (http://www.nytimes.com/2007/11/27/business/worldbusiness/27gene.html?_r=1&ref=world&oref=slogin)

 ところが、ディマス環境担当委員は、EFSAのリスク評価も決して完全なものではないとして、一定のGM作物の承認拒否が妥当と認めている。フランスも、EUが唯一栽培許可を出したMON810の栽培モラトリアムを決めた(フランス 農薬使用半減 公共食堂注文食材の20%は有機に GM作物商業栽培は凍結の方向,07.10.26)。

 ヨーロッパのGM政策に新たな転機が訪れようとしているのだろうか。しばらくは、注意深く見守る必要がありそうだ。