ウィルス抵抗性・栄養改善GMキャッサバ 5年以内に実用化 アフリカの救世主?

農業情報研究所(WAPIC)

08.8.1

 ”アメリカ政府”が7月30日に発表したところによると、ウィルス抵抗性、高蛋白、高鉄分、高ビタミンなど少なくとも四つか五つの形質を持つ遺伝子組み換え(GM)キャッサバの実用化を目指すフィールド試験が、プエルト・リコの米国農務省試験圃場で行われている。ビル&メリンダ・ゲイツ財団が資金を提供し、とりわけサブサハラ・アフリカの人々の栄養改善と農民の貧困脱出を目指す5年間の”BioCassava Plus”プロジェクト(参照:国際食糧政策研究所、USDAがアフリカにGM作物を売り込み,05.7.15)がここまで進んだということだ。

 この試験でそれぞれが単一の形質を持つ三つの品種を完成、年末までにはさらに二品種以上を追加する。そのあと、2009年にはケニヤとナイジェリアのパートナーとのフィールド試験に移る。これらの試験を終えたのち、これらの形質を一つの植物に合体させる過程に入る。5年以内に、四か五つの形質を併せ持つ最初のGMキャッサバが一般に利用できるようになろうという。

 Africa: Science Team Boosts Nutritional Value of Vital Cassava<America.gov (Washington, DC),7.30>,allAfrica.com,7.31
  http://allafrica.com/stories/200807310034.html

  アフリカ人にとってキャッサバはトウモロコシ同様、外来作物だ。奴隷とされるアフリカの人々を新大陸まで運ぶ間、彼らを船内で生かしておくための食料としてアフリカに持ち込まれたものだ。アフリカ人の苦難の歴史を象徴するキャッサバのGM品が、今度はアフリカの救世主として持ち込まれようとしている。しかし、たった5年の研究で、誰がそれを保証できるだろうか。アフリカ在来の重要食料作物(ヤムイモ、タロイモや雑穀)の研究には目もくれずなぜキャッサバなのか、またなぜGMでなければならないのか。なにか他意があるのだろうか(米国支援東アフリカGMキャッサバ計画 狙いは米国のバイオエネルギー源探索の疑い,06.9.14)。不吉な予感がする。

 GMキャッサバは、「在来食料の多様性」とともに、アフリカと「食料安全保障と食料主権」を奪い取る恐れがある(外来作物偏重が飢餓の根源 食料安全保障には在来食料が不可欠―ケニア研究者,08.6.4)。