栽培許可済みの除草剤耐性GMビート 重大な環境影響の恐れ 米連邦地裁判決

農業情報研究所(WAPIC)

09.9.24

 サンフランシスコ米連邦地裁判事が21日、米国農民が広く採用しているモンサント社の除草剤(グリホサート)耐性遺伝子組み換え(GM)シュガービート(テンサイ)について、米国農務省(USDA)は栽培の承認に先立つ適切な環境影響評価を怠ったという判決を下した。

 同連邦地裁は07年にも、やはりグリホサート耐性GMアルファルファについて同様な判決を下し、これは、結局、米国におけるこのGMアルファルファの栽培禁止につながった(米連邦地裁 杜撰な環境影響評価で農務省のGMアルファルファ承認は違法,07.2.14;米連邦地裁 除草剤耐性GMアルファルファ商業栽培を禁止,07.5.7)。新たな判決も、USDAが適切な対応を怠るかぎり、このGMシュガービートの栽培禁止につながる恐れが強い。

 Judge Rejects Approval of Biotech Sugar Beets,The New York Times,9.23
 http://www.nytimes.com/2009/09/23/business/23beet.html?ref=science

 ニューヨーク・タイムズ紙が報じるところによると、判事は、USDAはこのGM品種の形質の他のシュガービート、あるいは近縁作物―スイスチャード(フダンソウ)とテーブルビート―へのあり得る拡散の結果を評価し、環境影響評価書を出すべきであると述べたということだ。ただし、改善のための法的手段に関しては未決定で、そのための審理は10月30日に開始される。

 他方、食品安全センター、シエラ・クラブ、有機種子連合、小規模種子企業=ハイ・モウイング・オーガニック・シーズで構成される原告は、アルファルファの例を引き、判事の決定は承認を事実上取り消し、実験栽培以外の栽培を違法としたものだと論じているという。

 USDAは2005年の栽培承認に先立ち、環境影響評価を行ったが、重大な影響はないから環境影響評価書(EIS)の必要はないと結論した。

 しかし、判事は、GM作物の花粉が非GMビートに拡散する恐れがある、非GM作物を栽培したいという農民の選択を奪うこと、あるいは非GM食品を食べたいという消費者の選択を奪うことは、EISを必要とする重大な環境影響を構成すると述べた。

 GMアルファルファについて、USDAは未だにEISを拒んでいる。従って、その栽培は禁止されたままだ。GMシュガービートも同様な運命を辿る可能性が高そうだ。

 なお、日本では、モンサントのグリホサート耐性GMテンサイ1種が栽培・食用・飼料用に許可されており、もう1種が隔離圃場での栽培を許可されている。グルホサート耐性アルファルファについても、3種が栽培・食用・飼料用に許可されている。日本では、米国におけるような市民社会・司法のGM作物チェック機能は、ほとんど欠如しているようだ。