ビル・ゲイツ財団、GM研究に2,500万ドル贈与

農業情報研究所(WAPIC)

03.10.16

 世界最大の企業フィランスロピー団体で、これまでに巨額のエイズ・マラリア対策資金などを提供してきたビル・ゲイツ財団が、栄養不良に苦しむ人々のビタミンや微量栄養素の不足の解消に役立つとされる遺伝子組み換え(GM)作物の研究に、少なくとも2,500万ドル(約28億円)を贈与すると発表した(International Food Policy Research Institute receives $25 million grant to support innovative nutrition program for poor countries,10.14)。国際熱帯農業研究センター(CIAT)や国際食料政策研究所(IFPRI)が先導する栄養改善作物育種・普及のためのグローバルな10ヵ年研究計画(HarvestPlus)を支援する。この研究計画は、通常技術とGM技術を併用、農学者と栄養学者が共同して、豆・小麦・キャッサバ・トウモロコシ・米・甘藷などの基礎食料作物の「バイオ・フォーティファイ」―鉄・亜鉛・ビタミンAなどの微量栄養素の追加―を目指すものである。

 このプロジェクトには米国農務省、米国食糧援助プログラムなど、途上国へのGM作物・食品普及に躍起になっている機関も参画し、主要GM企業もかかわっている。途上国へのGMの導入については、なお激しい論議が続いている。微量栄養素の含有量を増やしたGM食品・作物の導入の「必要性」どころか「有害性」さえ問題にする意見も多い(例:インド:GMポテト給食で栄養不足、実験承認にも不備,03.6.16)。世銀の持続可能な開発担当副総裁で、CIAT、IFPRIやその他の農業研究パートナーを支援する国際農業研究協議グループ(CGIAR)の議長でもあるイアン・ジョンソンはゲイツ財団の援助を歓迎、「この研究計画は農業と公衆保健部門を結びつけ、栄養不良に挑戦するための公・民パートナーシップを創り出す。これはCGIARの農業研究諸センター及びそのパートナーによって採択された先駆的計画の最新の例である」と述べたというが、なにかうさんくささがある。バイテク企業のGM売り込み戦略はますます強化され、複雑になっている。しかし、栄養不良や食料生産の改善の方法はほかにもあり得ることを忘れてはならない。

 関連情報
 GMから有機まで、農業科学技術の役割検討で国際合意,03.8.6
 
世銀:農業科学のリスクと機会を探る国際協議プロセスを始動,02.8.31

農業情報研究所(WAPIC)

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