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		  農業情報研究所>農業・農村・食料>農業と環境>ニュース;2018年10月28日 
		フランス 冬季ミツバチ死亡率が異常に高い ミツバチの健康改善のために新たな措置 
		ミツバチの死亡率とコロニー(巣)衰退への理解を深めるべくフランス農業食料省(Le 
		ministre de l’Agriculture et de l’Alimentation)が初めて実施した全国規模の調査(2018年夏)により、冬季のコロニーの平均死亡率が異常に高くなっていることが判明した。養蜂業者や研究者など関係者が一致して<ノーマル>と認めた冬季死亡率は10%ほどだが、昨年10月24日に示されたこの調査の結果によると、2017-18年冬季のコロニー死亡率は3倍近い29.4%にも達していた。 この結果を受け、省はミツバチの健康状態を改善するためのさまざまな措置の強化を決めた。今年初めにブルターニュとペイ・ド・ロワールに設置されたミツバチ死亡・衰弱オブゼルヴァトワール(OMAA)の新たな地域への展開を加速する。 死亡率が容易に立証できる他の原因で説明できないとき、国が毒性学分析資金を出す。 
		 フランスのミツバチ群の健康状態の改善にために、ミツバチに寄生するヘギイタダニ(Varroa)に対する養蜂業者の効果的な戦いのため、養蜂部門を招致して国家戦略を迅速に定める。 
		 2017-18年冬季の高死亡率に関係した養蜂業者に向けた例外的援助の体制も作り、購入1ミツバチ群当たり80ユーロ(約1万円)の契約援助を通してミツバチ群更新を支援するということだ。 
		 Une 
		enquête confirme les mortalités anormales d’abeilles : le ministère renforce les mesures pour améliorer la santé du cheptel apicole 
		Ministère de l’Agriculture, de 
		l’Alimentation,18.10.26 Abeilles : 30 % des ruches sont mortes au cours de l’hiver écoulé,Le Monde,18.10.26 補遺 ミツバチ群の衰微が何故そんなに重視されるのか。ミツバチは主要な授粉動物=ポリネーターとして、農業生態系において重要不可欠な役割を演じている。ミツバチの大量死、衰微で養蜂産業の存続が危ぶまれるばかりか、食料生産が拠って立つ生物学的基盤が掘り崩され、人類滅亡にさえつながるかもしれない(アインシュタイン)からである。 
  ヨーロッパにそんな警鐘が鳴らされて久しい。EU(欧州連合)の政策諮問・決定機関である欧州議会(European 
		Parliament)が「養蜂と授粉(送粉)昆虫を救え、殺虫剤使用予防措置を」と呼びかける決議を採択したのは2003年10月のことであった(Résolution 
		du Parlement européen sur les difficultés rencontrées par l'apiculture européenne ,Europpean Parliament,9 octobre 2003)。それから15年を経た現在、授粉昆虫減少の原因究明はなお困難を極める一方、昆虫ばかりか「ポリネーター」と呼ばれる授粉動物全般の危機的状況が世界中から報告されるようになっている。 
		  IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)の最新報告(The assessment report on 
		POLLINATORS,POLLINATION AND FOOD PRODUCTION SUMMARY FOR POLICYMAKERS,IPBES,2017.2)によれば、世界のポリネーターの現状は次のとおりだ。 
		  ・北西ヨーロッパと北米では地方・地域レベルでポリネーターの数と多様性が減ってきた。その他の地域では野生ポリネーターのデータは欠落しているが、ローカルなレベルでの減少は記録されてきた。 
		  ・飼育されるセイヨウミツバチの数は過去50年間、一部ヨーロッパ諸国と北米は除き、世界的に増加してきた。しかし近年、少なくとも北半球の一部温帯地域と南アフリカでは、セイヨウミツバチのコロニーの冬季崩壊の例が急増している。 
		  ・授粉脊椎動物(鳥など)については、国際自然保護連合(IUCN)のアセスメントが、その16.5%は世界的に絶滅の恐れがあるとしている。昆虫ポリネーターについてはグローバルなレッドリストはないが、地域、国のアセスメントは一部のハチとチョウが絶滅の危機にあることを示している。 
		 
		 
		 
		  欧州議会決議、養蜂と花粉媒介昆虫を救え、殺虫剤使用予防措置を 農業情報研究所 03.10.11 
		  ヨーロッパの養蜂産業は10年足らずで壊滅 蜜蜂が集約農業・農薬の犠牲 農業情報研究 09.4.28 
		  ケニア 蜜蜂等の不足で園芸作物やコーヒーの品質と収量が低下 森林過伐や農薬で授粉昆虫が減少 農業情報研究所 12.10.30 
		  ミツバチ(ポリネーター)とネオニコチノイド 北林寿信 科学(岩波書店) 2017年10月号 985-988頁 
		 
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