++「BRING ME TO LIFE」第十二章(1)++

BRING ME TO LIFE

第十ニ章・歌姫との別れ
(1)









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 クルーゼとの定時連絡のため、アスランは一旦顔を洗ってから通信室へ出向く。

 それを確認して、ニコルがキラの部屋を訪れた。
「ニコルさん…」
「さっきはお疲れ様でした、キラさん。お昼ごはんにしませんか」
「あ、…えと…」
 …正直言って、食欲などかけらもないのだが。
 しかしニコルはにっこり微笑んで、キラの手を取る。
「大丈夫、無理に食べろとは言いませんから。ラクスさんとお別れの挨拶もしたいでしょう?」
「それは…」
「さあ、行きましょう」
「で、でも僕、勝手に出歩くわけには…」
「何言ってるんです。僕が一緒なんですから、勝手じゃないですよ」
「あのでも、アスランが…」
「僕はあなたの主治医ですよ? アスランにだって文句は言わせません」
 有無を言わせぬ笑顔をもって、ニコルはキラの重い足を運ばせる事に成功した。

 …ニコルさんも、ラクスやアイシャさんに似てるなぁ。
 流されるままに歩きながら、そんなことを思ってしまうキラだった。


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「いらっしゃいませ、キラ」
 どうやら集合場所はラクスの部屋という事で話が通じていたらしい。ニコルに連れられてラクスの部屋へ着くと、中にはイザークと ディアッカの姿もあった。
「………」
 複雑な表情で視線を落とすキラに、ディアッカが軽く吹き出した。
「そうビクビクすんなって。お前が成り行きでザフトと敵対する事になったってのは、さっき充分聞かせてもらったからさ」
「そういう事だ。ったく、いつまでもいちいち怯えるな」
「イザーク。そういう威圧的な言い方では、逆に怯えられますよ」
 あっさりとニコルに突っ込まれ、ムッとしてそっぽをむく。
 ラクスはクスクス笑いながら、しっかりキラをつかまえて、自分の隣の席に座らせた。
「それで皆様、自己紹介はもうされたのですか?」
「あ、そういやオレまだしてなかったっけ」
「まあ。さてはキラを一方的に質問攻めになさったのね」
「うーん、ちょっと否定しきれないですね。主犯は僕ですけど」
 主犯、というニコルの言い方に、キラは無意識に小さく笑った。
「つーか、まだ名乗ってないのってオレだけだろ多分。…ディアッカ・エルスマン。バスターのパイロットだ」
「あ、はい。……え…と、それじゃ……」
 ゆっくり視線をニコルへ移すと、彼は少し困ったように微笑んだ。
「ええ。僕は、ブリッツのパイロットです」
「………」

「さあ、皆様。お食事にしましょう」
 重くなりかけた空気を、ふんわりと和らげるラクスの声。
「…といっても、まだ肝心のお食事が届いておりませんわね…」
「さっき僕が、ラクスさんの部屋に五人分運んでもらうように頼んでおきましたから、すぐに来ると思いますよ」
「まあ、そうですの。そうしましたら、わたくしお茶を淹れてまいりますわ。ビンクちゃん、行きましょう」
「ハロッ、ゲンキ! ラ〜ク〜ス〜」
 ピンクのハロを伴って、ラクスは一旦部屋を出た。

 こうして四人にされても、何を話していいのかわからなくて。
 キラは微妙な居心地の悪さを感じ、小さく俯いてしまう。

「…キラさん、ウィスって御存知ですか?」
 唐突にそんなことを尋ねながら、ニコルがポケットから何やらカードの束を出してくる。
「え、…あ、はい…」
「良かった。ラクスさんが戻られて食事が届くまでの暇つぶしに、やりませんか?」
「おいニコル。何考えてるんだ一体。軍務で地球に降りるのにカードゲームなんか持って来るヤツがあるか?」
「あっ、そう言いますけどねイザーク。このゲーム、戦略性もあって結構奥が深いんですよ?」
「ま、このまま通夜の食事みたいな雰囲気なのも気分悪いし、いいんじゃないの」
「ハッ。まったく…」
 と言いながらも背もたれに預けていた背中を起こして、ニコルが配ったカードを手に取るイザーク。
「…え…っと……」
 戸惑っていると、ニコルが優しく微笑んだ。
「リラックスして下さい、キラさん」
 そして小声で囁く。
 …あ、そうか。僕に気を遣ってくれてるのか…。
 気付いて、慌ててカードを取る。
 これ以上ニコルに心配をかけさせるわけにはいかない、と。
「うわっ、サイアク〜。なんだよこのカード」
「ごちゃごちゃうるさいぞディアッカ。で? 誰からだ」
「それじゃ、キラさんからどうぞ」
「あ、うん」

 緊張していたキラの心も、やがてほぐれてきて。
 この一時、嘘みたいに穏やかな時間が流れていた。




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UPの際の海原のツブヤキ…興味のある方は↓反転して下さい(大した事書いてません)
短編「かすみ」に続いてテイルズ・オブ・エターニアネタです。
ウィス。それは海原が一時期異様にハマッたミニゲーム。
海原のスコアは自慢じゃないが凄いですよ。


現在、約−900ポイント。

ま、世に言う「下手の横好き」ってやつですな。
しかしここまで負けが込むというのも珍しかろう。カッカッカ。
………言ってて虚しくなってきた………(:_;)
いや〜、何度リッドの「ま、こんなモンだよな……。…はぁ…」を聞いたことか…。
なんだか石田氏にまで申し訳なくなってくるですよ…ははっ…。