BRING ME TO LIFE
第十四章・嵐を呼ぶ少女
(6)
『トリィ』
ペットロボの鳴き声に、はっと顔を上げるキラ。
それをきっかけにして、硬直していた面々がやっと我に返った。
「…な、なんか…。ごめんな、キラ」
「えっ?」
突然トールに謝られても。
「いや、ほら。オレがイージスの話題なんか出したから…なんか、ヘンな事になっちゃって」
「…………」
それでどうしてアスランではなく自分に謝るのだろうと思い困っていると、おずおずとカズイが口を開いた。
「…でもさ……ほんとのことじゃん」
「ちょっと! あんたあの時の戦闘覚えてないの? あのビーム砲撃ったのは後ろにいたナスカ級で、イージスは関係なかった
じゃない! それをこの人に言っても仕方ないでしょ!?」
「そうだけどさ。フレイはおんなじ学校行ってても普通科だったんだし…わかんないと思うよ、そういうの」
「………」
「それに、イージスが先遣隊を攻撃してたのは事実なんだし…結局、フレイにしてみればおんなじ事だと思うからさ…」
「カズイ!! もうやめろよ!」
トールに怒鳴られ、引っ込んでしまうカズイ。
「…みんなは、まだしばらくこの基地にいるんだよね」
「え? ああ、うん」
ふと口を開いたキラに、トールが答えた。
「面会にはその都度許可がいるらしいけど、キラをオーブに連れて帰るっていうこっちの要望に対する返答がくるまで、あたしたち、
ここにいてもいいみたい」
「そっか。…じゃあさ、悪いけど…今日はこれで解散にしてもいいかな」
「えっ!?」
冷静に語られたキラの言葉に、カレッジ組が驚きの声を上げた。
「フレイが落ちつくまで、傍に居てあげてほしいんだ。…多分、僕が一人でみんなとは会えないと思うから…」
きっと、アスランは面会に立ち合わなければならないと思うから。
「だから…みんなは、フレイをお願い」
「キラ………」
結局そのまま解散となり、トール達はサイ達と合流して、更にカガリらと合流すべく部屋を後にした。
ぽつんと残される、クルーゼ隊の面々と、キラ。
「……………ここでボーッとしててもしょうがねェだろ。これからどうするんだ。…アスラン」
「え、…………ああ」
「…大丈夫かよ、お前」
意外にもディアッカから労りの声が上がり、アスランはやっと自分を取り戻した。
「…ああ。すまない」
「…………」
どう声をかければいいのか迷い、じっとアスランを見つめ気遣うキラ。
イザークは無言のまま、そんなキラを見つめている。
………面会の時、キラが彼女に責められたという話は聞いた。
フレイ・アルスター。…特にコーディネイターには良い感情を持っていないはずだと、警戒はしていたが。
ここまで露骨で、激しく、一途なものだとは思わなかった。
あの炎を、キラはぶつけられたのか。
覚悟もないまま放りこまれた戦場から戻ってすぐ、あんな激しい憎悪と怒りを。
一人で、受けとめたというのか。
…こんな華奢な体で。あんなに傷つきやすい心で。
「………この後、大使達に基地の中で進入許可が出ている区域を案内しなければならない。ニコルは、キラを部屋に」
「わかりました。でも…アスランは、彼女と会わない方がいいと思うんですけど…僕が代わりましょうか?」
「いや、…俺が直接、大使代表と交渉しないといけない事もあるから」
「でも、アスラン」
思い切って声をかけるキラ。
だが、アスランは反射的に彼女から顔を背けてしまった。
「………」
しまった、と思ってももう遅い。
心配そうなキラの瞳に後ろめたさに似た何かを感じながら、きまずく背を向ける。
「…ディアッカ、悪いが一緒に来てくれ」
「了解」
「ニコル、イザーク。…キラを頼む」
「…」
いやに気弱なアスランに気味悪さを感じるイザーク。だが、シャトルを撃ち落した件でキラに責められた時の自分を思い出して、無理も無いと
短く息を吐く。それからすっとキラの隣に立った。
アスランはディアッカを伴って、先に部屋を出た。その背中を見送るキラ。
「…さ、行きましょうキラさん」
「あ、うん…」
ニコルに促され、イザークと共にキラも部屋を後にする。
アスランはまだ、動揺している。
キラには分かる。
きっとアスランはまだ動揺している。
微かに瞼が震えているのを、彼女は見逃さなかった。
UPの際の海原のツブヤキ…興味のある方は↓反転して下さい(大した事書いてません)
さてさて。
ようやくアスランに変革が訪れました。
かな〜りべっこり凹んでます。というわけで、もうしばらく彼のヘタレにお付き合い下さいませ。
……こんなこと言ってますけど私アスラン大好きなんですよ(^^;)