BRING ME TO LIFE
第十五章・ほどけゆく心
(1)
「絶対そうよ! キラ、あのアスランってコの事好きなのよ!」
えっ、と部屋に入ろうとしていた足が止まってしまうアスラン。
あれからフレイは鎮静剤を打たれ、今はサイに付き添われて医務室で眠っている。合流したカガリとフラガ、アイシャも交えて一通りの
説明を終え、一休みという事で食堂で集まってそれぞれお茶を飲んでいたところだった。
サイとフレイの様子を確認するために一旦食堂を出ていたアスランが戻ってくると、部屋の中からミリアリアの声が飛んできた…という
わけだ。
「そりゃ、あんなに会いたがってた友達なんだから、嫌いなわけないじゃん」
「…んも〜…トールったら信じらんな〜い!」
はぁと溜息をつきながら机に突っ伏してしまうミリィ。
「要するに、坊主が恋愛感情を」
「フラガ少…っじゃない、フラガさん、坊主じゃないんですってば」
「いやぁ、しかしいきなり坊主が女だったとか言われてもなぁ」
すっとぼけるフラガに、ずいっと顔を近づけるトール。
「ほんとに一度会ってみて下さいよ! メチャメチャ可愛いくなってましたよ、キラ」
「あっ、ちょっとトール!?」
「え!? いやっ、そうじゃなくて、一般論だよ一般論!」
「そうだよミリィ、コーディネイターと張り合ったってしょうがないよ」
かちゃん、と殊更音を立てて、カップが机に置かれた。
「カズイ。あたし達は特別平和大使だ。ナチュラルとコーディネイターの掛け橋となって終戦への道を探すのが使命だ。そういう言い方は
金輪際するな」
「カガリ代表の言う通りね。そんな言われかたをされると、私だって居心地が悪くなってしまうわ」
キッと厳しいカガリの視線と、にっこり微笑んだアイシャ。
バツが悪そうに縮こまってしまうカズイに、トールとミリアリアはやれやれと溜息をついてしまった。
「ともかく、この後あたしもキラに会わせてくれ」
「はぁ?」
いきなり話を振られて、思わず素っ頓狂な声をあげてしまうディアッカ。
「はあじゃないだろ。面会に許可がいるっていうんなら、さっさと許可を降ろせ」
「あのなぁ…あんた、ちゃんと人の話聞いてる? キラの身元引受人はあくまでアスラン・ザラで、オレにそういう許可だす権限はないの!」
ったく、お前らってマジでバカ? …と言おうとして、寸前で飲みこむ。
視線の先には、前髪のサイドにメッシュを入れた美女。
お前らと簡単にくくってしまえば、同じコーディネイターである彼女まで侮辱する事になってしまう。
これはよっぽど言葉に気をつけて話をしないとマズいな、とディアッカは意識を引き締めた。
そして、横からフラガが身を乗り出す。
「ていうか、お嬢ちゃんにはまだ、その身元引受人のアスラン・ザラと、交渉が残ってるだろ。キラに会ってるヒマあるのか?」
「っ………そ、それじゃ、キラも交えて話を」
「あのねぇ。捕虜の待遇についての確認と交渉に、当の本人呼んでどうすんの」
「本人の希望も聞いて話ができるじゃないか! うん、それがいい。そうしよう」
「それは無理よ?」
穏やかなアイシャの声に、ムッと振り返るカガリ。
「どうしてですか?」
声に出して尋ねたのは、トール。
「捕虜が自分の置かれた状況を完全に把握できるような事になれば、脱走の危険があるでしょう? それに、私達は地球軍に彼女を呼び
戻すためのカモフラージュじゃないかって疑われている筈だわ。私達が彼女を脱出させようとする怖れもあると警戒されている。…だから
無理よ。交渉の場に連れて来る事は出来ないわ」
「あたし達はオーブから来てるんだぞ! それがどうして地球軍の手先って事になる!」
「それはそうよ。私とあなた以外はみんな地球軍出身でしょう? 私がアスラン・ザラの立場でも、真っ先にそれを疑うわ」
「っ、そんな横暴な決め付けは我々に失礼だ! おいお前! キラが今までに一度だって、逃げ出そうとしたことがあったか!?」
今度はディアッカに矛先が向く。
彼はうっかり、盛大な溜息をついてしまった。
「あのなぁ……。そういう問題じゃないんだって。オーブにだって軍はあるんだろ? 捕虜を使った取引の交渉マニュアルとか、ないわけ?」
ぐっと詰まるカガリ。…今日はもう、何度めのパターンだろうか。
……キラ、あのアスランってコの事好きなのよ……か。
彼女にはそんな風に見えたというのだろうか。…現実との違いに、思わず小さな溜息をついてしまう。
…彼女が自分のことをどう見ているのかなんて…もう…わからない。
いろいろなことが頭の中でごちゃごちゃして。
それに、自分がキラに何をしてきたかを考えれば…。…キラは優しいから表に出さないだけで、とっくに自分のことを軽蔑しているのかも
しれない…。
………重たい気分を無理矢理切り換えて。
「待たせてすまない」
適度に話題が変わっていることを確認してから、アスランは部屋に入った。
それから、平和大使達の寝泊りする部屋を案内し、大使側は代表のカガリにフラガを交えて、こちら側は身元引受任のアスランに
ディアッカを交えて、事務的な交渉を行って。
キラに会わせろとまだ主張するカガリを今日はもう遅いからとフラガが諌める形で、彼女は部屋に戻った。
ふぅ、と重い溜息をついてしまうアスラン。
「…おい、アスラン」
「?」
「お前、もう仕事これで終わりだろ?」
「あ、ああ。すまない、ディアッカももう」
「ちょっと付き合えよ」
「…え?」
もう上がってくれていい、と言おうとして、くいっと食堂の方向を指される。
「……………」
何だろうと思いながらも頷き、並んで歩き出す。
UPの際の海原のツブヤキ…興味のある方は↓反転して下さい(大した事書いてません)
懺悔します。そして謝罪します。
…軍が捕虜をどう取り扱うかなんて全然調べてませーん!!!
大変申し訳ないであります…。
労働させるとか、取引の材料にするとか、そういった具合でありましょうか…?
とりあえずSEED世界ではなんちゃら条約ってので暴行は禁止されているんですよね。
……あれって現実にもあるの…?←自分で調べろ