++「BRING ME TO LIFE」第十五章(3)++

BRING ME TO LIFE

第十五章・ほどけゆく心
(3)









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 やっとカラになったアスランのグラスに二杯目を注いでやり、自分は三杯目を注ぐディアッカ。
「それで、肝心の本題だけどさアスラン。お前、キラのこと抱いただろ」
 ぶふっっっ。

 ………突拍子も遠慮もないディアッカの発言に、思いっきり吹いてしまうアスラン。
 そのまま、むせ込んでしまう。
「…な、………何を」
「俺らが初めてキラに会って、イザークがつっかかって口ゲンカになって、で、キラがぶっ倒れた後…じゃない?」
「…………………」
 なんでそんなところまで言い当てるんだ、と絶句してしまったところに、アイシャからクスクスと笑い声がこぼれる。
「あらあら。最近の子供は手が早いわね」
 まるでディアッカの言葉を疑わない発言に振り返ると、…彼女の目は笑っていなかった。
「お、俺…は、そんな…」
「ダメダメ。そこで吹いて絶句した時点で白状したよーなモンだって」
「………な、………ど、どうして………」
「だってお前あん時、意味なく色気全開だったからさぁ」
「は!!? な、何なんだそれは! いつ!」
「だから、ニコルと入れ違いんなった時だよ。ラクスが明日プラントに帰るぞって伝えに行っただろ?」
「………」
「あ、タイミング的に直後だったかアレ」
「ディ、ディアッカっ!!!」
 顔が真っ赤になってしまうのは酒のせいだけではない筈だ。
 やれやれと肩を竦めるディアッカ。
「あ〜あ。イザークのヤツ、めっちゃくちゃ出遅れたな」
「なっ」
「アスランくん。ちゃんと責任取りなさいね。キラちゃんずっと男装してきて、そういう事に免疫ないはずだもの。初めての相手って、 特別だと思うわよ?」
「………」
 アイシャの一言に、ぐっと詰まってしまうアスラン。…険悪な表情になっていくのが、自分でもわかった。
「お前もそーゆーの免疫なさそうだし、それで処女相手って、けっこーキツかったんじゃないの?」
「あいつは初めてじゃない」
 低い声に、え、と止まってしまう二人。
「………多分、足付きの連中の中に、恋人がいる」
「え?」
 きょとんとしてしまうアイシャ。ディアッカは怪訝そうにアスランを見ている。
「…なに、ヤってる最中に男の名前でも呼んだ?」
 首を横に振る。
「でも、多分…間違いない」
「なんで」
「…なんでって…」
 どうしてそこまで追及するのかと戸惑ったように顔を上げると、なんとも言えない顔をしているディアッカの視線とぶつかった。
 そして彼は、くいっと指でこちらへ手招き。
「ちょっと耳貸せ」
「?」
 何なんだ一体と思いながら耳を差し出すと、ナイショ話の要領でなにやらぼそぼそ。
「――――――っっっ」
 途端に顔を爆発させてしまうアスラン。
「どうなんだよ」
 顔を離してテーブルに肘をつき、手で顎をささえる体勢に戻るディアッカ。盛大な溜息をついて、アスランは小さく頷いた。
「…………大体…まあ、ほとんど………………おまえの言う通りだ」
「んじゃ間違いねーよ。キラはバージンだったね。お前が最初の男だよ」
「………」
 なんでそんなことお前が断言できるんだ、まさかお前、ラクスと…………いや、今はキラの話をしているのであって、ラクスは関係 なくて、まあ実際ラクスと恋人なのはディアッカなんだからそういう事があったとしても不思議じゃないし、大体形だけの婚約者の俺に それをどうこう言う資格はないし、というか言う気もないし、って、いやだからそうじゃなくて、ていうかどうしてこの話にサバーハ大使 を同席させるんだ、とか。
 一通り混乱した思考を巡らせ終えて、コップから飲み物を一口。
「っっ」
 そういえばこの中身は飲み慣れない酒だったと飲んでから思い出して、むせそうになってしまう。
 初々しい反応に、アイシャは思わずふっと小さく吹き出してしまった。
「なあに、あなたひょっとしてキラちゃんが初めてだって気付かなかったの?」
「……………」
「ダメねぇ。ちゃんと相手の反応を見てあげなくちゃ」
「でっ、でもあいつには………」
 キスマークが。
 ………そこでそう反論しようとして、はっと気付く。

 どうしてこんな単純な事に気付かなかったのだろう。
 どうして、確認もせずに思いこんでしまったんだろう。


 キスマークが一つあったからといって、それが即『情事』のあととは限らない。


 そういったようなコトがあったのだとしても、…最後まで許した証明にはならない。
 全くそういった事は関係なく、ただ偶然できた痣だったのかもしれない。たとえば何か、荷物を抱えていたときに角が当たってうっ血 したとか…。
 …そうだ、そもそもあの時、キラは心当たりがないというような事を繰り返し訴えていたではないか。



 ………だとしたら。
 俺は、なんてことを。




「………」
 青ざめて悩み込んでしまったアスランの様子に、アイシャは少し怪訝そうな目線を送る。




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UPの際の海原のツブヤキ…興味のある方は↓反転して下さい(大した事書いてません)
アスランとディアッカの男の子トーク、という感じで(笑)
ま〜あやっと気がつきましたよこの人は。肝心なとこに。(引っ張ったのは私だって)
…ディアッカはグラビア雑誌読んでたくらいだから知識ありそうだけど、アスラン達は…どうなんだろ。
アカデミーもなんだか真面目そうだしなぁ。
アスラン自身そんなに興味ありそうじゃないし…微妙?