BRING ME TO LIFE
第十六章・失っていた歯車
(1)
そう、もう逃げない。
彼は、妙な事を言っていた。自分が、誰かに抱かれた事があるかのようなことを。
どうしてそんな誤解が生まれたのか、ちゃんと知りたい。どうしてアスランがそんなことを思ったのか、それを知りたい。
そしてちゃんと誤解を解きたい。
性別を偽っていた事情を話して、…事情といっても、親から禁じられていたとしか言い様がないのだが。でも、とにかく、そのことを
きちんと伝えて。
ずっと嘘をつき続けてきたことを謝って、それから。
この気持ちも、ちゃんと告白しよう。
……………と思っていたのに。
「え? アスラン、もう仕事に行ったの?」
思わず目を丸くしてしまう。
「今頃はカガリ大使代表と会ってる頃じゃないのか」
なんでオレの顔を見るなり、よりによってアスランのことを聞くんだ。とばかりに、ぶっきらぼうに答えるイザーク。
「つか、あいつと会わなかったのかよ?」
「う、うん…昨夜アスラン、部屋に帰ってこなかったから…」
「え!? ……マジ?」
こくんと頷くキラに、ディアッカはあちゃーっとばかりに額を押さえた。
「なんだかなァあいつ…まーた独りで考え込みやがったな…」
「おい、何なんだ一体」
「…キラ、悪い。昨日仕事終わったアスランに酒飲ませたんだオレ」
「え? お酒?」
きょとんとするキラと、眉間にシワを寄せてしまうイザーク。
「いや、まあ…なんつーか、それなりに凹んでたからさ、あいつ」
「それで酒か。短絡的でお前らしい発想だな」
「なんだよ? お前だってどーせ、このスキにキラといちゃいちゃしてやれーとか思ってたんじゃないの?」
「何!? 人を貴様と一緒にするな!」
「あーっ、ちょっともう、ケンカしないでよ!」
当人同士にしてみれば、この程度の舌戦は日常茶飯事なのだが、しかしキラにはまだ慣れないのだろう。二人の間に入って、とりなそう
とする。
躊躇なく腕に触れる指に、イザークの体温が少し上がってしまう。
そこへ、ニコルが入ってきた。
「キラさん、特別平和大使の方たちから面会要請が入ってますけど、どうしますか?」
「え? …って、面会許可は、アスランが…」
「アスランからは、僕に任せるって指示を受けてます。だから、立会いも僕が。…フレイ・アルスター大使からも、面会要請が来てますけど…
どうしますか?」
ムッとイザークの表情が険しくなる。それこそ、傷が歪むくらいに。
「あの女…まだキラを縛る気か!?」
「…イザーク」
困ったような、でも少しだけ鋭さを秘めたキラの声。
キラにとって、未だにフレイは特別な存在だった。
『トリィ』
肩で鳴くトリィに、優しい視線を送って。
「…会っても、いいですか?」
ニコルに尋ねる。
帰ってきたのは、了承の笑顔だった。
「なんで面会許可が下りないんだ!!」
ばん、と両手で机を叩きながら立ちあがるカガリ。
「ミリアリア達は今日もキラと会うつもりだって言ってたぞ! なんであたしにだけ面会許可を下ろさない!?」
思わず重い溜息をついてしまうアスラン。…これでは、確かにアイシャが心配するのも無理はない。
「それは、今の自分の姿を鏡で見ればわかる」
「何だと!?」
「代表、あなたのその態度では、捕虜に引き合わせればそのまま拉致されかねないと危惧されても、文句は言えない」
「な…っ!!」
「だーから言ってるでしょ、落ち着きなさいって」
ぽんぽん、とフラガがカガリの肩を軽く叩く。落ち着かせるように。
「お嬢ちゃんは仮にも、オーブの獅子の一人娘でしょうが。お父さんの顔に泥塗ってやりなさんな」
「っ……あたしは!!」
キッとフラガを睨むように振り返るが、そこにはいつもの笑顔があるだけ。
「…お仕事、ちゃーんとしてしまおうぜ」
「……」
まるで子守りだな、と、エンディミオンの鷹の意外な姿に小さく溜息をつく。
「…、失礼した、アスラン・ザラ。交渉を始めたい」
「………了解した」
まだ完全に納得したわけではないようだが、とにかくカガリは椅子に落ち着いた。
UPの際の海原のツブヤキ…興味のある方は↓反転して下さい(大した事書いてません)
はい、またもやほとんどお話進んでおりません(>_<;)!!!
え〜……………長編、ということで。
まだ続きます、ということで。