BRING ME TO LIFE
第三章・歌姫の見た秘密
(1)
沈黙。
複雑な表情でキラを見つめるアスラン。
その視線から逃れるように、辛そうに顔を小さく歪めながら床を見つめているキラ。
そんな二人を交互に見遣るラクス。
…沈黙。
「………アスラン。キラ様とゆっくり会えたんですもの、何かお話なさっては?」
ふんわりとした声が優しく響いた。
彼女に視線を移し、小さく溜息をつきながら窓の外を見るアスラン。
「……先日この地域で、バルトフェルド隊とストライクが交戦した時の記録を見た」
キラはますます顔を背ける。…小さな動きだったけれど。
「その時にはバクゥを蹴散らして、お前が勝っている」
「……」
「それなのに、特に戦闘中でもない時にあっさり捕まるとはな」
「…」
「そもそも、戦闘状態でもないのにストライクのパイロットだと敵に知られてしまうあたり、やっぱりお前に軍人は向いていない。守るだ
何だと大見得切って、結果がこれか」
「アスラン!」
そんな話しをさせたかったわけではないラクスが、小さく非難の色を込める。
アスランはアスランで、気まずさに俯いてしまった。
こんなことを言いたいわけではないのに。
彼を、責めたいわけではないのに。
どうしてだろう。
ひどく、心が荒れている。
再びの沈黙を破ったのは、ハロ。
「ハロハロ、アケタンデー」
「え!? ちょ、ちょっ」
「ラクス!」
戸惑うキラと驚くアスランの前で、キラの手首を繋いでいた手錠の鍵が外れ、ガチャンと床に落ちた。
「キラ様にこんなもの、必要ないでしょう?」
にっこり。
…なんだかアイシャの必殺スマイルに通じるものを感じたのは何故だろう。
何とも言えず固まった二人。その時丁度、ヘリが着陸体勢に入った。
ヘリが着陸したことを知らされ、扉が開く。
「さあキラ様、参りましょう」
「えっ…あのっ、ラクス!?」
腕を組むというよりも、キラの左腕をがっちりと抱き止めている、の方が近い。
そのままさっさと降りてしまおうとするラクスに、アスランも慌てた。
「ラクス! 彼は軍の捕虜なんです、勝手は…」
「あら、そんな事は重々承知していますわ。ですからこうしてお連れしているでしょう?」
きょとんと首を傾げる。
「アスランには軍人としてのお仕事がいろいろとおありでしょうから、わたくしが責任を持ってキラ様を見張っていますわね。さ、こちら
ですわ」
「ちょっ、そんな無茶苦茶な…」
慌てるキラをぐいぐい引っ張って、タラップを降りる。
「………、…っ! ラクス!」
一瞬あっけにとられてしまって、しかしすぐに我に返り二人を追うアスラン。
敬礼する兵士たちに歌姫の微笑みを返しながら、彼女はキラを連れて意外なほど早歩きで基地へ入って行く。
「ラクス! ちょっと待って下さい!」
慌てて駆けてくるアスランに、ぴたっと足を止めたラクスがずいっと顔を近づけるように振りかえった。
「っ」
突然アップになった婚約者に一瞬たじろいでしまうアスラン。
そんな彼の反応を確認してから、またにっこりと微笑む。
「覚えておいて下さいませ。わたくしは、キラ様の味方です」
「え?」
「例えアスランでも、キラ様を苛める方は許しませんわ。しばらくアスランにはキラ様に会わせてあげません。さっきキラ様を苛めた
罰です」
「………」
何とも言えない表情で絶句している婚約者。その反応に満足げに微笑んで、ラクスは再びキラの左腕に両手を絡ませる。
「さあキラ様、こちらですわ」
「え…えっと、あの、ラクス…っ」
戸惑った様子でアスランを振り返るキラ。その顔は、三年前までの記憶にあるキラと全然変わってなくて。
ラクスの爆弾発言に固まっていたアスランだが、思わず苦笑してしまった。そしてそのまま、クスクス笑い出す。
変わっていない。キラは、変わっていないのだ。
目の前にいる彼は、間違いなく自分の知っているキラだ。
「―――――」
二年ぶりに見るアスランの笑顔に、キラもあっけにとられて。
その隙にラクスに引きずっていかれた事は言うまでもない。
UPの際の海原のツブヤキ…興味のある方は↓反転して下さい(大した事書いてません)
この基地はどこでしょう?
ジブラルタルではない、どっか別の基地という事で…^^;
ザフト勢力圏内にある、ジブラルタルよりちょっと規模小さいくらいのところ。
…うーん、あんまり激しく突っ込まないで下さい…すみません思慮浅くて…。