++「SHADE AND DARKNESS」2−2++

SHADE AND DARKNESS

two
「Wait and See 〜リスク〜」〜オーブ〜
(2)









「これが一番映えるに決まってるだろう! どういうセンスしてるんだお前らは!」
「いんや、ぜーったいこっちだね」
「そうですか? 僕はこちらの方が似合うと思いますけど」

 二十四時間活動するオーブの若者のために、二十四時間営業している人気のブランドショップ。
 そこでキラの服を探し始めた四人だが、その内三人がもめている。
 その間にタオルを調達して、アスランがキラの髪を拭いていた。
「…あ…あの…、自分でや、…りますから…」
「……いいから、じっとして。キラ…さん」
 ぎこちなく言葉を繋ぐ二人の前で、やっぱり三人の意見はまとまらない。
「だーってこれじゃあオレと並んだらすっげー違和感じゃん」
「キラの服をお前に合わせてどうする!? 馬鹿かお前は」
「ここはやっぱり本人の意見を聞いた方が…ねえキラさん、どうですか?」
 と、それぞれが自分の選んだ服を示す。「オレの選んだ服がいいよな?」とばかりに、当然のように同意を求めてくるイザークと ディアッカの表情に、困ったように苦笑してしまうキラ。
「…え〜っと………」
「………これ、どうかな」
 タオルをキラの首にかけて、すっと並んでいる服の中から選び出すアスラン。
 細身でスタイルのいいキラ。彼女の体のラインが品良く映えるワンピースだった。大き目のボタンと細いニ連の飾りベルトが あしらわれた、膝上までのタイトスカート。
「あ、僕こういうの好きかも… って、あっ! あの、そうじゃなくて!」
 うっかり目を輝かせてしまったキラに、ニコルがくすっと微笑んだ。
「ああ! 確かにこれならキラさんに似合うし、靴にも合いますよね」
「ちぇっ、なんだよお前、いいとこ取りしやがって」
「フン。それで、髪は乾いたのか」
「あ、は、はい」
 その答えを確認してから店員を呼びつけ、さっさとアスランが持っている服からタグを外させてしまう。
「よし。着替えて来い」
「はっ!?」
 ハンガーから解放された服をキラに押し付けながら、またもや彼女に有無を言わせぬイザークの言いよう。
「いいからさっさと行って来い。アスラン」
「ああ。…キラ、さん。こっち」
「え…っ、あ、…」
 すっ、と手を取られて。
「………」
 その温もりに、逆らえなくなってしまう。
 ―――甘えちゃダメだってわかっているのに。

 などと感傷に浸っていると、ぽいっと試着室に放りこまれてしまった。
「……えっ、あのっ」
「いいから、早く着替えておいで」
「っ……」
 閉められたカーテン越しの優しい声に、…また逆らえなくて。




「…あの、お待たせしました」
 遠慮気味なキラの声に振り返る四人。
 ―――――そして、絶句してしまう。

 確かに最初から美少女だとは思っていたが、服一つでここまで変わるとは。
 真っ白なワンピースに、白い肌。すらりと長い脚。美しいラインを描く肢体。雫こそ落ちない程度にタオルドライされたものの、まだ 水分を多く含む艶めいた髪。
 思わず、当初の目的も忘れて魅入られてしまう。

「すみません。お金、後でちゃんと出しますから」
 そんな四人に気付いていないのか、ぺこりと小さく頭を下げるキラ。
「…あ、い、いえ。気にしないで下さい。僕達四人からのプレゼントって事で」
「そ、そうそう」
 はっと我に返ったニコルとディアッカが、するりとキラの両隣に滑り込む。
「でも、さっき値段見てきたけど…悪いですよ、今日会ったばっかりなのに、こんな高い服…」
「気にすんなって。四人からっつっただろ? 4で割ったら、まあこんなもんだろ」
「ちょっと、そんな生々しい話しないで下さいよ」
 苦情を言いながら、店のロゴが入った袋に入れられたキラの私服を店員から受け取るニコル。
「それより、おなかすきませんか? ちょっと面白そうなバイキングレストラン見つけたんです」
「バイキング…」
「どうですか?」
 すっと差し出された手の平サイズのモバイル画面の中で、若者むけのバイキングレストランの店内写真がかわるがわる映し出さてゆく。
 店の入口で最初に料金を払ってしまえば、その後はドリンクのみ別料金の食べ放題。…それなら自分でお金を払えば好きな分量だけ 食べればいいわけで。
 キラは迷わず頷いた。



「キラっ、いい加減そのカードをひっこめろっ!」
「いやです! 自分の分はちゃんと自分で出しますって、さっきから言ってるじゃないですか!」
「この…っ、可愛くない女だな!!」
「何とでも言って下さい。はい、お願いします」
 店員の女性はクスクス笑いながら、結局キラのカードを受け取った。
 イザークはチッと舌打ちをして、ぷいっとそっぽを向いてしまう。
「僕、席取ってきますね」
「あ、お願いします!」
 支払手続をしているイザークの後ろから、ニコルが声をかける。
「あ、………」
 知らない人について行っちゃ駄目だぞ、とか。
 うっかり言いそうになってしまって、ぱっと自分の口を手で塞ぐアスラン。
 …もう十六だっていうのに。昔とは、違うのに。
 つい、まだ兄貴肌で接しようとしてしまう自分に、苦笑してしまった。
「あっれ〜、顔赤いぜお前?」
 ディアッカの声にハッとすると、言った本人はイザークの肩に肘をかけている。どうやら言葉をかけた対象は自分ではなかったようだ。
「なっ、オレは別に!」
「まったまた。ひょっとして、マジでハマッた?」
「ふざけるなっっ!!」
 むきになって振り向くイザークだが、その顔は、指摘の通り少し赤い。
「それならそれでさぁ、マジでオトせよ。どっちが早いか競争な。オレも負けてらんねぇし〜」
「何!?」
 さっさと支払を済ませてホールへ向かうディアッカに、キッと向き直る。
 悪戯っぽい笑顔でイザークを振り返ると、意味ありげにウィンク。
「っ―――!!」
 ぎりっと手を握り締めて、後に続くイザーク。
 店員にカードを渡しながらその様子を見ていたアスランの表情は、大変険悪なもので。
「………あ、あの、アスラン? どうしたんですか、怖い顔して」
「え?」
 戸惑ったようなニコルの声にはっと振り返る。
「…い、いや…」
「なら、いいんですけど。…だけど、イザークもディアッカも本気なんでしょうか」
「……。…彼女はモルゲンレーテの最重要部に入っていける。目的は情報だ。間違えるなよ」
「それはそうですけど。…でも、あの二人の気持ちもわかるなあ。とっても可愛いですよね、キラさんて。アスランもそう思いませんか?」
 ぎょっとしてしまう。
 そう言いながら振り返ったニコルが、はにかんだように微笑していたから。


 ………キラと会いたかっただけなのに、なんだか恋敵を増やして泥沼にはまっているような気がする………。






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UPの際の海原のツブヤキ…興味のある方は↓反転して下さい(大した事書いてません)
さて、ザラ隊とキラのデートはもう少し続きます。
果たしてキラのハートをゲットするのは誰だ!?
って、アスキラって言ってる時点でバレバレですが。

2003/07/29一部改稿。
…よく考えたら最初にキラが着てた服がどっかに消えてました。
苦し紛れにニコルに持たせてみる…(^^;)フォローになっただろうか…。