工業計測などが得意分野ですが、下表のように様々な設計経験を持ちます。これらのほとんどは、特殊な部品を使わない設計です。汎用部品を利用した特殊な回路設計にも応じることが出来ます。
設計課題 | 内容 |
マイコンで実現するサーボループ (New) | マイクロチップ・テクノロジー社からリリースされているCコンパイラを用いて、サーボループを作りました。あるお客様からのご依頼で、負帰還回路内に光を用いたアナログ回路がありました。別のご依頼では、負帰還回路内に機械動作を含むアナログ回路がありました。以前から、これらはマイコンでも実現可能だと考えていました。そこで、PIC16F1705を用いて試作したものです。このマイコンは、12bit ADCや8bit DACやオペアンプを備えています。LEDをDACで駆動し、フォトICダイオード出力をADCでデジタル化して信号処理をしています。マイコンを最高速の32MHzで動作させ、サンプリングレートを高めてオーバーサンプリングを併用することで分解能を高めています。このようにマイコンでサーボループを構成すれば、マイコンを変更しても移植は容易です。また深いアナログ知識は不要で、若手技術者でも維持管理可能です。 |
静電容量-電圧変換回路の設計 (New) | 入力静電容量範囲が10pFで、静電容量センシングに用いるために設計しました。このアプリケーションでは、10fF(10pFの1/1000)のような微小静電容量変化の検出が求められました。DMMでは1fFの変化が検出でき、雑音は0.2fFp-pでした。このような専用ICが存在しますが、浮遊静電容量を検出しまうために独自に回路を考案しました。この出力電圧は、マイコン内蔵の12bit ADCでデジタル化され処理されました。分解能がやや不足気味でしたので、16倍のオーバーサンプリングで16bitデータにして対処しました。 |
マイコン内蔵ADコンバータのデジタルフィルタ | 簡素な演算式によるデジタルフィルタを考案しました。マイコン内蔵のADCを使用した際、「スパイク状の雑音が大きい」という問題に直面しました。いくつかの実験から、マイコン内部でデジタル回路との交流結合由来の雑音に思えました。とは言え外部ADCの追加は不経済に感じ、内蔵ADCの利用を考えました。高速処理は不要だったので移動平均も手段の一つですが、マイコンの負荷が重くなることが気になりました。解決策を考えるうちに、抵抗・コンデンサによる一次低域通過フィルタ特性に近似できる簡素な計算式を思いつきました。四則演算のみで、移動平均のようなデータを格納するメモリも不要です。計算式の特性から、発振・発散するような面倒もありません。これをデジタルフィルタにして、マイコン内蔵ADCが使えるようになりました。 |
オペアンプ選定起因の不具合解決 | オペアンプの発振を回路図から見抜き、問題解決を図りました。不具合症状は「量産されている計測用増幅器で、ドリフトを生じたり、精度を満たさない工程不良品が複数出ている」でした。回路図は初見であり、いくつかのオペアンプで構成されていました。採用されていたオペアンプは特徴的な出力回路を持っており、動作条件によっては発振する個体が存在する製品でした。全数が発振するわけではないので、回路設計段階では気づかなかったと思われます。私は不良率や動作条件から「発振の可能性が濃厚だ」と考え、不良品を使った実験で発振による不具合であることを突き止めました。 |
サーボ回路の不具合解決 | メカニカル動作を閉ループ内に持つ、サーボ回路(負帰還回路)の問題解決を図りました。制御系の形は、タイプⅠです。不具合症状は「異音がする」でした。不具合の原因は、不適切な回路定数によるサーボループの発振でした。フォトダイオードを使ったメカニカル位置検出器の感度が高過ぎることで、発振を生じたものです。この感度が高過ぎることは、机上での回路検討段階で見当を立てていました。感度を抑える実験を行い、適正な感度はそれまでの1/100程度であることが確認できました。位置検出器の感度を変更して、ほかの回路定数も適切に変更して問題解決を図りました。この案件ではありませんが、過去にタイプⅡサーボループの対応経験も持ちます。 |
マイコン演算による温度補償 | MEMSセンサが持つ非線形な温度依存性(誤差要因)をデジタル信号処理で補償し、温度依存性を1/50以下に低減しました。高精度な計測器の実現過程で必要になりました。この補償演算では、二次式を用いました。この計測器は量産品であり、生産現場で実施可能な手段の開発を行いました。 |
4-20mAの回路設計 | 工業計測で用いられる4-20mAの回路設計をしました。回路は、汎用部品を用いた負帰還による電圧→電流変換回路で無調整です。負帰還回路にしたことで、直線性などの直流性能は5桁程度の測定器では誤差が確認できないほどです。電流源の設計では高出力抵抗(dV/dI)の実現と、安定性の確保(発振させない)ことが重要です。前者は「出力電流の電圧依存性が小さいほどよい」と言え、0-10Vの変化で2μA以下を実現しました。後者では電流源の高出力抵抗から伝送線路がLC共振回路のように働くため、これによっても発振など不都合な現象を生じない回路にしました。伝送線路長はキロメートルオーダーにもなることから、1ヘンリーのような大きなインダクタンス負荷でも安定動作する回路にしました。 |
ESD耐圧の改善 | 数百ボルトのESD(静電気放電)でも誤動作を起こしていたマイコン応用装置に、17kV以上のESD耐圧を持たせました(IEC 61000-4-2準拠)。誤動作は筐体などに加わったESDのスパイク電流起因で、半導体デバイスのレジスタ内容が書き換わってしまうことで発生していました。着手当初は原因が判明しておらず、それがESD起因であることを突き止めるところから始まりました。次に、ESDから誤動作発生までの過程を実験を繰り返してモデル化しました。このとき電子回路シミュレーターも活用しました。このモデル化では、書籍などでみかけないメカニズムの発見がありました。作成したモデルに従い対策を施すことでESD耐圧が飛躍的に高まり、17kV耐圧の実現に至ったものです。 |
低コスト高精度計測回路設計 | 低コストを実現するために、電源電位を基準電位にするレシオメトリックで設計しました。センサが定電流駆動でしたから、電源電位に比例する定電流源回路を設計しました。使用したADCは1個300円程度の16bit⊿Σタイプで、こちらの基準電位も電源電源電位にしました。 |
24bitADコンバータを使った設計 | 使用したADCは、⊿Σ変調器とデジタルフィルタを内蔵したものです。まずADC単体の雑音評価を行い、問題ないことを確認しました。ADCには、センサ出力信号処理用に前置増幅器をとりつけました。この前置増幅器には低雑音・ゼロドリフトのオペアンプを用いた差動回路を採用したことで、スイッチング電源でもリニア電源と同等の低雑音性能が維持できました。⊿Σ変調器とデジタルフィルタを組み合わせたADCを使いこなすためには、オーバーサンプリングやデジタル信号処理に関する知識も重要です。ADC内蔵レジスタや前置増幅器の帯域幅などの設定に必要だからです。これらを経て、±120万の分解能を持つ回路を完成させました。 |
微分補償の近似式の考案 | MEMSセンサの経時誤差が、電気回路でいう一次の抵抗・コンデンサによる微分回路や積分回路の近似特性を示していました(複数の誤差要因があり、各々微分または積分特性を有していました)。その時定数が1時間のように長いことからアナログ回路による補償はあきらめ、マイコンによる演算で対処しました。マイコンで実行可能な四則演算による微分回路の近似式を考案し、センサの誤差低減に成功しました。 |
PLL 周波数シンセサイザ | アナログチューニングの AM ラジオでは、受信周波数が正確にわかりません。そこで任意の周波数で、 600[Hz] の AM 変調波が送信できるマーカー発振器を設計・製作しました。このマーカーにラジオをチューニングすれば、受信周波数を正確に合わせることが出来ます。多少工夫していますが、単純な PLL 周波数シンセサイザの応用です。YouTube に、動画をアップロードしています。動画では説明していませんが、16進数2桁のサムホイールスイッチで、01hex (18[kHz]) ~ FFhex (2.304[MHz]) の範囲でロックするように設計しました。周波数変換などを用いずに、この2ディケード以上の広範囲でVCOが発振しロックすることが工夫した点です。 |
回転数計 | カスタムメードの手作りコイル製作に用いている工具に取り付けた、回転数カウンタを設計・製作しました。正・逆回転に対応してインクリメント・デクリメント動作ができます。いわゆる A/B の2相信号で実現しています。YouTube に、動画をアップロードしています。 |
SiC監視用増幅器 | Hブリッジドライバなどに用いられるSiCドライバで、過電流などを検知するための増幅器を設計・製作しました。高速パワー素子のSiCは、dv/dtが 数十[V/nsec] 程度で数百[V]のような同相電圧変化があり、di/dtが 数[A/nsec] 程度で100[A]のような電流変化により数十[nH]のようなインダクタンスに大きな電圧が生じます。これらへの対処を施し、ミリボルトオーダーの信号電圧を抽出する、DC~数十[MHz]の帯域幅の計測用増幅器を設計しました。 |
ピコ秒タイミング生成回路 | ピコ秒オーダーのデジタルタイミング生成回路で、高速積分器とコンパレータの組み合わせ回路です。3.3Vの電源電圧を基準電源にしているものの、レシオメトリックにより電源電圧変動による生成タイミング変動を抑え、シンプル化を図った回路を設計しました。 |
電子抵抗器 | 入力電圧に比例した抵抗を作り出す「電圧制御抵抗器(VCR)」を、設計・製作しました。抵抗の生成に負帰還を利用していますので高精度・高安定です。50[MΩmax]の可変抵抗器や、100[Ω]白金測温抵抗体(RTD)の代替信号源としても設計しました。 |
LED調光器 | 輝度の視覚的な直線性を得る回路を、設計・製作しました。こちらの「アンチ・ログ・ドライブ(LED照度リニア・コントロール)」です。バックライトの調光などに使えます。YouTube に、動画をアップロードしています。 |
アナログ・シーケンサー | オペアンプなどを用いて、順序動作を得る回路を設計・製作しました。こちらの「交通信号機・鉄道信号機 簡易コントローラー」です。長期メンテナンス性に優れ、クロック雑音の無いことが特長です。YouTube に、動画をアップロードしています。 |
モールス符号解読機 | コンピューターを用いないモールス符号解読機を、設計・製作しました。こちらの「70年代式 モールス符号・復号器」です。クロック雑音の輻射が無く、短波ラジオと組み合わせても使えるのが特長です。YouTube に、動画をアップロードしています。 |
可変電圧源の再設計 | 古い装置に内蔵されたDAコンバータを用いた16[Bit]精度の可変電圧源を、現在入手できる部品で設計・製作しました。 |
地震警報器 | 震度1も感知できる高感度が特長の地震警報器を考案し、設計・製作しました。また、震度1~5の感度調整ができます。 |
10MHz 40dB 3ch 広帯域増幅器 | 工業計測用増幅器を、設計・製作しました。10MHzバースト波受信用の広帯域増幅器です。波形の忠実性を向上させるために、ベッセル型LCフィルタを入出力に備えました。帯域幅は±3MHzで、SPICEシミュレーションなどで決定しました。通過帯域内増幅度の平坦性確保から、ftがGHzオーダーのトランジスタで設計した負帰還増幅器を採用しました。入力は200Ω平衡入力で、出力は50Ω不平衡出力です。3ch一体化では、各ch間アイソレーションを高め、ch間を鎖交する磁界の影響を低減しました。 |
10MHz 40dB 狭帯域増幅器 | 工業計測用増幅器を、設計・製作しました。低雑音を意識したディスクリート回路ですが、増幅度が安定するように抵抗器で帰還を施した設計です。入力は200Ω平衡入力で、出力は50Ω不平衡出力です。 |
AMトランスミッタ | AMラジオ用に、2種開発しました。
ひとつは、独自開発の一象限変調を使ったAMラジオ用を考案し、設計・製作しました。こちらの「AM送信機(一象限変調)」です。電池動作ができ、直流変調が可能で、良好な直線性が特長です。
もうひとつは、送信波を内蔵直線検波器でオーディオ信号に戻し、負帰還により音質向上を図ったモデルを設計・製作しました。YouTube に、動画をアップロードしています。
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高出力電圧・電流オペアンプ | 出力電圧±100V・出力電流±2Aのオペアンプを設計製作しました。負荷は7mHのコイルです。出力電流が2Aのとき、出力電圧が0Vに近い使用条件のため、出力段の電力損失が問題となりました。コイルの駆動電圧が周期波であることを利用して、出力電圧が下がった時だけ出力段の電源を±12Vに切り替え出来ることで電力損失を抑えました。回路は、ほぼ全てをディスクリート部品で構成しました。 |
I2Cコントローラ | I2C(通信機能)を持つICのコントローラを、マイクロコントローラを用いて設計・製作しました。回路は、ほぼデジタル回路です。ソフトウエアは、アセンブラで記述しました。 |
V-Iトレーサー | 2端子間の電流・電圧特性を、それぞれX・Y信号として出力する装置の設計・製作をしました。オシロスコープなどで、特性が視覚的に把握できます。ICの故障原因調査にも使えます。 |
高電圧出力アンプ | 高耐圧小信号トランジスタを用いて、±10[V]→±200[V]に増幅する回路を、設計・製作しました。2000pFの静電容量を持つピエゾ素子の駆動アンプです。20kHzまでフラットな特性が要求されました。また、出力端での直流オフセット電圧を、無調整で1mV以下に抑えました。静電容量負荷でも発振せず、増幅度が任意に定められる回路構成を採用しました。 |
電圧制御電流源 (VCCS) | 1[MHz]程度まで、フラットな特性を持つ電圧制御型電流源を設計・製作しました。入力にファンクション・ジェネレータを接続すれば、入力波形どおりの電流が得られます。出力電流を負帰還で生成していますから、高精度です。 |
高感度微分器 | ブリッジ入力の高感度微分器を、設計・製作しました。ブリッジ入力に計装アンプを用い、その等価入力雑音電圧で感度が決まるほどの低雑音性能を実現しました。また雑音は帯域幅で決まりますから、最大平坦特性のバターワース・アクティブフィルターで帯域幅を制限しました。 |
高速積分器 | 入力信号が波形鈍りのある 0.2~20[μsec] のパルス状電圧で、これをスレッショルド判定して積分する(面積を算出する)回路の設計・製作をしました。積分値が、基準電圧に対して等面積となるパルス幅(TTLレベル)に変換出力する回路です。0.1[%FS]の直線性を実現しています。また積分器をμsecオーダーで、高精度リセットできるディスクリート回路も組み込みました。全体的な回路構成は、二重積分 AD コンバータのそれに似ています。この積分器をADCで実現する場合、サンプリングレートが2Gs/sにもなってしまうことから、アナログ回路で実現しました。 |
デューティー比変換回路 | 入力に方形波電圧(デューティー比は任意)を与え、出力する方形波電圧のデューティー比を任意に設定できる回路を設計・試作しました。信号周波数が変化しても、デューティー比を設定どおりに保つ負帰還型です。 |
位相計 | 数MHz程度まで、0.1°の分解能で2信号間の位相差を測定する回路を設計・製作しました。オペアンプで交流信号を扱うとき、負荷の変化で僅かに入出力間の位相も変化します。この計算結果と実際の一致を確認する必要から、設計しました。 |
位相差検査回路 | PLLのロック状態の検査回路を設計・製作しました。大手メーカーのテレビIC生産工程で、色信号試験(3.58[MHz])に使われました。自動試験機メーカーの専用モジュールと比べ、大幅なコストダウンが図れました。 |
トランジスタ直流・交流性能試験機 | 小信号トランジスタ(BJT, JFET, MOSFET)の直流や低周波特性を測定するベンチトップ試験機を、設計・製作しました。被測定トランジスタを、オペアンプの帰還回路に入れて測定する特徴を持ちます。こちらの「トランジスタ・メータ」です。逆方向伝達の微小信号も、同期検波を使って測定しています。 |
各種リニアIC性能試験機 | オペアンプ・温度測定・基準電圧・対数増幅など、リニアICのデータシート記載の性能を測定する装置です。試験方法は、国際標準規格などに基づいて行います。IC生産工程用の自動試験機や、ベンチトップ試験機などを設計・製作しました。実装などで発生する誤差要因を見抜いた設計が必要です。 |
AD・DA・VFなど各種コンバータIC試験機 | データシート記載の直流・交流・雑音などの性能を測定する装置です。IC生産工程用の自動試験機や、ベンチトップ試験機などを設計しました。生産工程用の設計では、高精度と短い試験時間の両立が求められます。会社員だった当時はリニア系半導体メーカーに勤務しておりましたので、このような経験を持っております。
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スペクトラム拡散通信の実験 | この実験は、1986年にアマチュア無線として行ったものです。雑誌 「Ham Journal No.63(CQ出版社)」に、この製作記事が載っています。設計・製作した装置は、搬送周波数28MHzの2相PSK直接拡散で、独立した送・受信機間は同軸ケーブルで接続しました。PLLを使った「スライディング相関」で同期検出を行い、同期検出に成功すると、このPLLをDLL(Delay Looked Loop)の回路構成に自動的に切り替えて同期の追跡(同期保持)を行うものです。拡散符号は65,535長のM系列で、250kbpsで発生させました。参考書籍は「スペクトラム拡散通信方式(ジャテック出版)」で、動作概念を得ました。得た動作概念から、回路の設計・製作を行ったものです。
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