中国政府 食用油メーカーの値上げに縛り 国の全体的利益に留意せよ

農業情報研究所(WAPIC)

07.11.6

 中国国家発展改革委員会(NDRC)が11月5日、主要食用油メーカーや業界指導者を北京に呼び出し、高騰する市場価格を抑制するために、原料を秘匿するな、原料供給を不正に操作するな、生産をカットしたり、供給を制限したりするな等々の要求を突きつけたということだ。NDRCの一役人(匿名)は、原料コストの上昇で生産コストが上がり続けているのだから、加工企業が価格を上げるのは理解できる、しかし、他の品物も軒並み価格 が急騰するなかでの食用油の価格引き上げに大衆は強く反発してきた、メーカーは、”社会的責任感を深め”、”国の全体的利益を心に留めよ”と諭されたという。

  China's major edible oil makers urged to stablize prices,xinhua.net,11.5

 完全な価格統計はないが、様々な地域からの不完全な統計では、国内食用油価格は、去年の11月から今年6月の間に20%上がった。10月26日開店後5分の特売に客が殺到した上海のスーパーで、15人の怪我人も出るありさまだ。

 北京での密室会合後に出された声明で、NDRCは次の5項目の要求をしている。

 @加工者は、原料の秘蔵、原料供給の不正操作、生産の削減、あるいは供給制限によって、市場秩序を撹乱したり、価格急騰への怖れを掻き立てたりしてはならない。

 A値上げは適正なマージンの範囲内に抑えられ、絶対に必要なときになされねばならない。また、加工者は可能な限りコストを抑え、管理を改善し、原料コストを吸収せねばならない。

 B大規模メーカーは価格設定で共謀したり、量を減らした、あるいは粗悪な品を提供しないこと。

 C現在の価格条件の下では、企業は利益の一部を人々に移転し、世評を大事にする必要がある。

 D産業団体は企業向け指針を提供し、企業の法律と規則の遵守を確保し、不正競争の場合には企業を訓戒し、不正行為が市場監督者に知らされるようにせねばならない。値上げが追加生産コストを超えるときには、市場監督者が踏み込む。

 参加メーカー名は公表されていないが、業界代表者たちは市場秩序を維持し、価格安定に貢献することを約束したという。

 しかし、ロシア同様(ロシア政府と食品産業 基礎食品の価格凍結で合意 高率穀物輸出税は当面棚上げ,07.10.26)、こんなことで価格上昇が止まるはずもない。この記事によっても、中国農業科学院油料作物研究所長は、価格高騰の原因は、作付面積の劇的減少で油料作物生産高が不足しているのに、需要は急増していることことにあると言っている。2001年から2006年にかけ、需要は1454万トンから2235万トンへと、年率8.95%の急増だ。

 農業部は9月に油料作物増産のための11の措置を発表した(中国政府 大豆等増産に本腰 面積拡大・単収増加・改良品種普及促進措置,07.9.24)。その効果が現われるのは未だ先だし、需要の急増に追いつくのは大変な難事だ。今や世界の輸入量の4割を飲み込む大豆の輸入関税 も3%から1%に引き下げたというが、国際価格自体が高騰を続けており、その効果も続かないだろう。関税引き下げは、既に衰えている国内農家の増産意欲をさらに削ぐことになるかもしれない。

 日本の米あまりと同様、中国の油脂不足も、問題解決は八方塞がりだ。恐らく、”専門家”には答えが出せないだろう。

 関連情報
 
ロシア 大豆油等食用油の輸入関税引き下げへ インフレ抑制のため,07.10.3