アンデルセンの国 ショッピング・エリアから姿を消す格安食品スーパー

農業情報研究所農業・農村・食料欧州ニュース:16年9月23日

 かつてデンマークのショッピング・エリアにでんと構えていた安売りスーパーが姿を消しつつある。消費者が値段よりも品質で品物を選ぶようになってきたために、大手スーパーチェーンが安売り店を閉め始めた。この2年、その数が着実に減っているという。

 小売り業の専門家は、「安売り店は消耗戦の真っただ中にある。いくつかのチェーンは店を閉めたが、こんなことが続いても驚かない」と言う。

 国の消費者が価格よりも品質を重視、たくさん食べるよりいいもの(有機産品・放し飼い動物産品・抗生剤不使用産品*?)を食べるようになってきたので、多くの格安スーパーチェーンが縮小の道を選んだ。

 格安スーパー・ ファクタは昨年、21の店舗を閉めた。その前にも14の店舗を閉めている。KiwiAldiも店を閉めたり、店舗を増やすのをやめた。

 ただし、ノルウェー人所有のRema 1000のように、なお店舗を増やしているチェーンもある。昨年15店舗を増やし、今後さらに15店増やすという。その社長、格安店にも未だチャンスがある、競争者の撤退で市場シェアは伸びているという。

 Discount supermarkets disappearing in Denmark,Copenhagen Post,16.9.20

 さすがアンデルセンの国、世界中のスーパーストアが安売り競争に狂奔するなか、まるで夢のような話である。デパ地下で高級食品(材)を求める良家の奥様もいないことはないが、スーパーで格安食品を買いあさり、あるいは格安ファストフードを食べて糊口を凌ぐワーキング・プアがひしめく日本ではとても真似できない。格安店がなくなれば飢え死にする人もいるだろう。

レジオン・ドヌール勲章 国民の所得格差を示すジニ指数で見ると、デンマークは世界で5番目に所得格差が小さい国である。日本は格差が大きい順で、世界141ヵ国中の73番目である(世界・収入不平等指数ランキング)。OECD諸国(34ヵ国)の貧困層人口割合を見ても日本は第6位、デンマークはチェコ、アイスランドを並ぶ32位である。しかも、アベノミクスは、この格差を縮小するどころか拡大させている(参院選4つの争点<くらし・アベノミクス> 世代超え広がる格差 東京新聞 2016年6月11日)。アンデルセンの国は星の彼方の遠い国、レジオン・ドヌール勲章も遠ざかるばかりである。

 *WHO:デンマークの家畜成長促進抗生物質禁止実験を高く評価―禁止加速の可能性―,03.8.18