農業情報研究所農業・農村・食料北米ニュース:11年8月27日

猛暑と乾燥、エタノール輸出需要がつり上げるシカゴ穀物相場

 米国中西部の猛暑と乾燥による不作・減収予想と、補助金廃止の動きにもかかわらずブラジルへの輸出需要の急増で一向に減りそうもない米国のバイオ燃料(エタノール)用トウモロコシ需要がシカゴ穀物先物相場をつり上げている。

 トウモロコシと大豆の主産地であるアイオワとイリノイは1955年以来最も暑い夏と言われる(Hot Midwest Summer Erodes Corn, Soy Harvest,Bloomberg,8.26)。乾燥が米国の小麦主産地(大平原地帯)における今後2ヵ月の間の冬小麦の撒きつけ を妨げる恐れがある(Wheat near 2-month high on drought concern,Reuters,8.25)。これによって供給量が大きく制限されるだろうという思惑から、トウモロコシ、大豆、小麦が軒並み急騰を始めた(シカゴ商品取引所穀物等先物相場(期近):最新260取引日)。

 他方、待ったなしの財政赤字減らしのための補助金撤廃が不可避となっている(米国上院 一転してエタノール補助金廃止法案を可決 トウモロコシ価格急落,)エタノールの生産も一向に減る気配がない。既に米国で生産されるトウモロコシの40%を消費する(シカゴ穀物相場 トウモロコシが小麦に迫る エタノールが肉食文明に転機をもたらすか?)に至っているエタノール生産のためのトウモロコシ消費は、高価なために伸び悩む飼料用消費を上回る勢いだFor the first time, more corn to ethanol plants than used as feed,Delta Farm Press,8.15)。エタノールの国内需要は、2010年、すでに限界に達しているが(北林寿信 「バイオ燃料をめぐる国際動向:2010年」 バイオマス白書2001)、ブラジルへの輸出需要が急増しているからだ。

 ブラジルは砂糖の国際価格高騰でサトウキビエタノールの生産が低迷、自国の燃料エタノール需要にも応えきれない状況に陥っている。20%のエタノール輸入関税も2011年について廃止した。ブラジルのサトウキビエタノールには経済的にまったく対抗できなかった米国のトウモロコシエタノールも競争力を獲得、米国は、いまやブラジルを凌ぐ世界一のエタノール輸出国にのしあがった(U.S. ethanol exports to surpass Brazil this year,Reuters,8.25)。こうした状況がいつまで続くかは分からない。補助金撤廃が確実になったことから、エタノール工場建設計画をキャンセルする動きも出ている(Fuel plant cancels lease,Times Union,8.23)。 高率輸入関税の廃止も確実で、ブラジルの巻き返しも始まる(Petrobras Plans to Spend $570 Million in Ethanol Acquisitions Over the Next 5 Years,soyatech,11.8.23;Petrobras, Sao Martinho Plan to Build World's Largest Sugarcane Ethanol Plant,soyatech,11.8.19)。米国エタノール産業の未来が明るいわけではない。ただ、当分は(少なくとも2011年中は)、エタノール増産に伴うトウモロコシの高値が続くだろう。連動して、大豆、小麦の高値も続くだろう。