フランス国立農学研究所(INRA)、第二次有機農業研究計画始動へ

農業情報研究所(WAPIC)

04.2.25

 フランスで有機農業開発計画が始動、EUもアクション・プランの始動を目指すなか、フランス国立農学研究所(INRA)が第二次研究プログラムを発足させる。このために30人の専任研究者を動因、今後3年間で総額1,500万ユーロ(約20億円)の研究予算を注ぐ。その一部はINRA独自の研究に当てられるが、他の一部は農業技術調整協会(ACTA)及び有機農業技術研究所(ITAB)と連携しての研究に当てられる。

 2001年に始まった第一次計画の下では、銅の土壌への影響と使用量削減方法、有機農業の施肥、果樹の技術的・経済的可能性などをテーマとプロジェクト研究が組まれたが、2004−05年は、(1)有機農業の小麦蛋白氏質の品質とパンの価値及び品質、(2)有機農業転換の分析、(3)有機農業の環境影響をテーマとする。これらのテーマはについては次のように説明されている。

(1)有機小麦・パンの品質については、生産者から消費者まで、有機農業の全関係者の関心が高い。栄養価、蛋白質の組成、パンのタイプなどの品質の特徴からその決定要因(窒素肥料制御、品種、製パン技術など)の分析まで、有機パンの品質の問題に総合的に取り組む。また、品質基準・分析技術などの方法的側面や経済(生産費、消費モデル)にも取り組むことができる。

(2)現在の有機農業経営者の大多数は転換間もない経営者で、観察・診断・方向づけの手段をが欠いている。そのために、学際的・体系的に経営の変化―転換後の観察と診断、農業方法とシステムの変化の分析、転換の生産システム変化への影響―を理解することを目指す。システムの安定性の研究を可能にするために、研究対象期間は法的転換期間を超える。学際的分析は、(@)農法(輪作、耕うん、農業資材など)との相互作用の関係にある最も決定的な障害(雑草、植物の健康、家畜衛生問題など)の解決策、(A)労働と経営所得の変化に関する基準の作成、を軸に行われる。研究は、単なる事例や実用面での研究の域を超え、生産システムの構成要素を明確にし、実施される農法を仔細に記述する典型的タイプの構築につながるものでなければならない。 

(3)環境は有機農業の利点とされることが多いが、管理の診断の手段としての現象の理解は進んでいない。多様な次元での環境を考慮して、様々なレベルで、地方的アプローチを重視して、観察・測定・行動の手段を把握し、改善することを目指す。とくに、有機農業のすべての構成要素(水・大気・土壌等)と生物多様性、場合によっては景観への影響の評価し、様々な観点から作用のメカニズムの理解を前進させることが重要である。研究プロジェクトは、これらすべての一部または全体をカバーすることができる。

 90年代前半まで、INRAは有機農業に対して敵対的とまでは言えないが、一線をひき、推奨できるのはせいぜい生産性と環境を両立させる環境保全型農業までだとしてきた。どうやらこの一線は超えたようだ。

 関連情報
 フランス農業省、有機農業振興策を発表―飛躍的発展は疑問,04.2.3
 
欧州委員会「有機食品・農業のためのヨーロッパ行動計画の可能性の分析」(翻訳),03.2.18

農業情報研究所(WAPIC)

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