フランス食品衛生安全庁、特定危険部位指定脊柱の牛月齢引き上げを拒否

農業情報研究所(WAPIC)

04.3.24

 フランス食品衛生安全庁(AFSSA)は22日、脊柱を特定危険部位に指定する牛の最低月齢を現行の12ヵ月から引き上げるという農業省食品総局等の03年10月23日の諮問に否定的に答える意見書を出した(Avis de lAgence française de sécurité sanitaire des aliments concernant la modification de l'âge minimum des bovins concernés par le retrait de la colonne vertébrale (22 mars 2004))。フランスは、やはりAFSSAの昨年10月の意見に基づき、食用に屠殺される牛の義務的検査の月齢を、肉骨粉全面禁止後に生まれた30ヵ月未満の牛がいなくなる今年7月以降、24ヵ月以上から30ヵ月以上に引き上げることを決めている(⇒フランス、BSE検査月齢を24ヵ月以上から30ヵ月以上に引き上げへ,04.2.21)。今回のAFSSAの意見は、この検査月齢の引き上げと重なる「脊柱排除に関係する牛の最低月齢の引き上げは、現在の措置で保証されるのと同等な安全性のレベルの維持を可能にする保証はない」と述べる。

 AFSSAは、このように結論する理由を次のように説明する。

 「感染性が現在まで立証されていない特定危険部位に相当する胸腺に関する問題についてであれば、動物飼料への肉骨粉及び動物由来の油脂の使用の停止が有効に実施された日付に対応する日付で」、このような月齢引き上げの措置を取り上げることはできようが、「感染性を持つ組織に接触する脊柱のような特定危険部位については、それを確実とみなすための情報をなお欠いているそのような日付を根拠とすることは勧告できない」。

 これは次のような専門委員会の意見に支えられている。

 「実験データと理論的モデル化の結果の限界により、検査されない、または検査で陰性と出る12ヵ月から30ヵ月の一定の牛の中枢神経組織に感染性がないこと、したがって脊柱が特定危険部位に指定される牛の月齢の24ヵ月または30ヵ月への引き上げに関係するリスクの高まりがないことを保証することはできない。さらに、日本における21ヵ月及び23ヵ月の2頭の牛のBSEの出現のケースは、もしそれが確認されれば[ということは、これらが本当にBSEかどうか未だ疑っているということか?―筆者]、脊柱排除に関係する牛の月齢を現行の12ヵ月に維持することを支持する補完的要素をなす」。

 AFSSAは最後に、脊柱が特定危険部位に指定される牛の月齢の引き上げが取り上げられるとすれば、そのような措置は、BSEのケースの月齢が上がる現在の傾向が逆転したり、最も若齢の牛のBSE発生率が高まるような場合には、元に戻せるものでなければならないと念を押している。

 特定危険部位として指定する中枢神経組織を30ヵ月以上の牛のものに限定している米国とは対照的な見解である。米国農務省食品安全検査局(FSIS)は、中枢神経組織が感染性をもち始めるのは潜伏期末期で、英国での発症例で30ヵ月未満のものは0.01%に過ぎない、日本で発見された23ヵ月でのBSE確認のケースは異型のBSEだったし、もう一例や英国で発見された若い牛の発症例は、異常に多量の病源体を取り込んだ例外的事例だと、その見解を根拠づけている(⇒米国のBSE(第七報):監視・検査の強化、特定危険部位除去の問題点,04.1.13)。

 日本の農水省は、日本への牛肉輸出を求める米国食肉企業の全頭検査の米国農務省による認証と特定危険部位の除去を条件に輸入再開を行う腹を固めたようだ。これを条件とする極めて早期の輸入再開が取り沙汰されている。だが、中枢神経組織を特定危険部位として指定する牛の月齢については、どんな詰めがなされているのだろうか。米国のBSEに関する国際専門家調査団の報告(⇒米国BSE措置に関する国際専門家調査報告発表―肉骨粉全面禁止等を勧告,04.2.5)は、基本的にはEUと同じ12ヵ月以上としながら、米国のBSEリスクのレベルが確定されるまでの一時的妥協措置として、人間食料からの30ヵ月以上の牛の中枢神経組織、頭蓋、脊柱及びすべての牛の腸の排除という措置を認めた。食品安全委員会がこの妥協措置を認めるかもしれない。だが、そうなれば、日本と「同等」の安全措置が取られなければ輸入再開はないとしてきた政府は、これを裏切って輸入再開に踏み切ることになる。食品安全委員会が、肉骨粉禁止の「有効な実施」やBSE発生状況などのリスク要因も考慮したAFSSA並みの厳格なリスク評価をするのかどうかが焦点となってきた。

 農業情報研究所(WAPIC)

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