フランス研究グループ、羊の筋肉に異常プリオン発見

農業情報研究所(WAPIC)

04.5.24

 フランスの研究グループが羊の伝達性海綿状脳症であるスクレイピーに罹った羊の筋肉に異常プリオン蛋白質を発見した。研究は23日、英国のNature Medicine誌のインタネット・サイトに発表された(*)。

 羊のスクレイピーは、牛海綿状脳症(BSE、狂牛病)や人間のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、BSEが人間に伝達したとされる変異型CJD(vCJD)などと同様、異常プリオン蛋白質が関連した病気である。人間には移らないとされており、ましてスクレイピーの羊の肉を食べることによって人間に伝達する危険はないと信じられている。

 だが、プリオン研究でノーベル医学賞を受賞した米国のプルシナー教授は02年3月、マウスの筋肉にスクレイピーに関連した異常プリオン蛋白質を発見している(⇒マウスの筋肉に異常プリオンが蓄積という研究、食用動物の早急な調査が必要,02.03.19)。この発見は、既に海綿状脳症に罹った動物の肉を食べる危険性に一定の警鐘を鳴らしてきた。しかし、これは、感染したマウスの脳の筋肉または脳への注入により実験的に感染させたマウスについての発見だった。今回の研究は、自然に感染した羊と実験的に感染させた羊の両方にかかわる。どちらのタイプでも、スクレイピーの症候が現れる何ヵ月も前から、羊の筋肉細胞に異常プリオン蛋白質が発見されたという。

 検出された異常プリオン蛋白質のレベルは脳などに比べて5,000分の1ほどで、筋肉中のリンパ組織が低レベルの異常プリオン蛋白質を含むというのは既知のことであるから、研究者は、今回の発見が「人間への伝達のリスクを大きく変えるものではない」し、このデータは牛に拡張適用できるものでもないと言う。

 しかし、羊がBSEに罹ることがあるとすれば、この問題を改めて再検討する必要性が出てくるとも言う。羊にBSEが存在する理論的可能性は認められており、脳・脊髄などの中枢神経組織その他の一定の組織は、既にBSEの特定危険部位に指定されている(日本でも)。その現実的可能性については、英国を中心とするヨーロッパ諸国が、鋭意調査を進めており、最近の英国の研究は「羊にBSEの兆候」を初めて発見している(⇒羊にBSEの初のサイン、米国ではCJDのクラスター、緊急を要する調査の加速,04.4.8)。今後の研究の展開次第では、牛についても同様な再検討が必要になるかもしれない。

*O Andréoletti et al.,PrPSc accumulation in myocytes from sheep incubating natural scrapie,Published online: 23 May 2004(Abstract)  

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 Malformed Proteins Found in Sheep Muscle,The New York Times,5.24
 

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