アイルランド vCJDの地域的集中発生の恐れが浮上

農業情報研究所(WAPIC)

06.1.12

 昨年6月に狂牛病の人間版である変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)で亡くなった24歳の男性について調査したいたダブリンの検死官が、これまでに確認されたアイルランドのvCJD患者3人のすべてが半径5マイル以内に住んでおり、うち2人は近縁者であることを明らかにした。共通の感染源をもつvCJDのクラスター(集中発生地)の存在の可能性が浮かび上がってきた。

 アイルランドの最初のvCJD犠牲者は10年前に確認された英国滞在暦の長い33歳の女性で、彼女の死は英国での感染がもたらしたとされてきた。ところが、彼女は、第二の犠牲者である24歳の男性の近親者で、彼が暮らしていた場所に近いところに住んでいたことが判明した。さらに、現在vCJDで闘病中の20歳の男性(第三の犠牲者)も、これと遠くないところで暮らしてきたという。

 24歳の男性の父親は、彼の息子は他の家族と同じ食事をしており、これには地域の二つのスーパーの一つから購入した肉が含まれると言っている。彼は、息子が英国からの輸入肉か、アイルランド産感染牛の肉を食べて感染したのではないかと恐れている。 家族や地域住民は将来の発病に怯え続けることになる。

 この男性を解剖したミカエル・ファーレル博士は、検死官から知らされるまで、33歳の女性が彼の近くに住む近親者であることを知らなかった。しかし、この状況では三つのケースの地理的関連の調査は理にかなうと言う。彼によると、24歳の男性の扁桃と脾臓に関する証拠は、彼が経口で感染したことを示唆しており、潜伏期間は4年から15年の間と考えられる。

 ただし、保健省関係者は、国内の食肉供給業者やと畜場に関する情報は”法的理由”で提供できなかったと言う。検死官は農業省と保健省に三つのケースの地理的関連性の調査を要請するつもりと語っている。

 vCJDの潜伏期間の長さからして、今後10年にさらに犠牲者が出るだろう言うダブリン・セントヴィンセント病院の顧問神経病学者・ミカエル・八チントン教授も、このような少数例ではクラスターかどうか確かなことは言えないが、調査は行うべきと同意している。ただし、調査は非生産的だろう、英国でも独特な地方的と畜・食肉処理慣行があった地域での集中発生の一例があるだけと言う。

 この発見は地域住民の不安を掻き立てるだけに終わるかもしれない。

 Double death uncovers a link to CJD 'cluster',Irish Independent,1.11
 http://www.unison.ie/irish_independent/stories.php3?ca=9&si=1539595&issue_id=13525
 Father of vCJD victim demands probe amid 'cluster' fears,Ireland.online,1.11
 http://breakingnews.iol.ie/news/story.asp?j=72189778&p=7zy9xx8x&n=72190158

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