米農務長官 韓国が牛肉輸入で国際基準に従わねば韓米FTAは批准されない

農業情報研究所(WAPIC)

07.4.6

 ジョハンズ米農務長官が5日、2日に合意した米韓自由貿易協定に関する声明を発表した。この協定により、520億ドル近い米国農産物の韓国への輸出が即時無税となり、とりわけ牛肉、豚肉、鶏肉の韓国市場へのアクセスが拡大する、「協定が米国農産物にとって多くの有益な条項を含む」する一方で、「韓国が科学に基づく国際ガイドラインに従って米国牛肉に対する市場を開放しなければ批准されないと確信する」とわざわざ言明している。

 STATEMENT BY AGRICULTURE SECRETARY MIKE JOHANNS REGARDING THE FREE TRADE AGREEMENT WITH KOREA,07,4.4

 その経済・政治・軍事力を背景に圧倒的交渉力を持つ米国は、他国に対して経済面のみならず政治面も含むあらゆる側面で「米国基準」を押し付ける手段として地域貿易協定を利用する戦略を取ってきた。必ずしも成功したとは言えないが、米国で承認された遺伝子組み換え(GM)食品の無条件受け入れ、経済・社会・環境面にどんな影響があるかも省みようとしない知的財産権保護強化や投資規制の緩和・撤廃、金融危機に際しての資本移動制限の撤廃、さらには米国流デモクラシーやイラク侵攻を含むテロ撲滅策への協力の強要、等々。

 今回は、韓国が喉から手が出るほどに渇望する巨大な米国市場の開放と引き換えに、多角的衛生植物検疫(SPS)協定では簡単には強要できないであろう狂牛病(BSE)にかかわる安全措置としての米国産牛肉輸入規制の撤廃を迫ろうというわけだ。汚い(アンフェア)といえば汚いには違いないが、敢えて二国間交渉に望むならばこれも当たり前のことと覚悟せねばならないだろう。米国だけではない。日本もタイやフィリピンとの協定で、これら相手国を有害廃棄物の捨て場にすることに成功した(フィリピン 日比EPAで増えるだろう日本からの有害廃棄物の捨て場は既に完成,06,11.1;タイでも有害廃棄物の捨て場になると、日本との経済連携協定批判の動き,06.12.3)。これらの国の指導者は、それでテロの脅威から解放されるとか、”美しい国”なるという幻想に取り付かれている。

 関連情報
 韓国 米国産骨入り牛肉、年内にも受け入れか? 米議会の韓米FTA承認を勝ち取るため,07.4.4