韓国 米国産骨入り牛肉、年内にも受け入れか? 米議会の韓米FTA承認を勝ち取るため

農業情報研究所(WAPIC)

07.4.4

 韓国が米国との自由貿易協定(FTA)の実現と引き換えに、狂牛病(BSE)関連貿易ルールとしての骨入り米国産牛肉輸入禁止を解除することになりそうだ。

 米国は、FTAの一環として、韓国政府が骨入り米国産牛肉に対する韓国市場開放を保証するように要求したきた。しかし、韓国側は、国際獣疫事務局(OIE)が5月に行う米国のBSEリスクステータスの決定を待って輸入ルールを再交渉するという立場を維持、結局、この問題はFTA交渉とは切り離された。

 韓国農業大臣が2日に語ったとこによると、韓国と米国は6月頃に米国産牛肉のための新たな輸入ルールを策定するための交渉を始める。コメをFTAの対象外とすること と引き換えに、近い将来広範な米国産牛肉の輸入を許すという”秘密協定”があるという噂が広まっているが、これは否定した。OIEが5月に米国に対して”管理されたリスク”のステータスを与えれば、そのときに既存の輸入ルールの見直しにつながり得る交渉を行う計画だという。とはいえ、「牛肉輸入基準は科学的リスク評価を通して決定され、政治的考慮によっては左右されない」し、OIEの勧告は基準として利用するとはいえ、それにこだわる必要はないとも語っていた。

 S. Korea, U.S. will renegotiate beef import rules in June: agriculture minister,Yonhap,4.2
 http://english.yna.co.kr/Engnews/20070402/640000000020070402203743E9.html

 ところが、それからたった1日後の3日には、農業省筋から、韓国は年末までに米国骨入り牛肉が消費者に届くことを許すように輸入ルールを和らげるという情報が漏れた。米国が6月に輸入基準を改める交渉を求めるならば変更は3-4ヵ月で可能、それから1ヵ月後には米国産牛肉が入港して、10月には市場に出ることが可能という。

 このように問題解決を急ぐのは、米国政府が、韓国政府の牛肉輸入制限の解除を、2日に調印され、今や議会の審議に付せられたFTA成立の基本的前提条件と考えているからだという。

 S. Korea may import U.S. bone-in beef by year's end: source,Yonhap,4.3

 何のことはない、自国議会のみならず、米国議会でもすんなりとは承認されそうもないFTAを何としても実現するためには、科学的な安全評価などに構っているわけにはいかない、「政治的考慮」で早々に決めねばならないということだ。6月に輸入ルール改変を決定できれば、米国議会の協定一括承認権限の期限切れにはぎりぎり間に合う。

 ちなみに、米議会一部上院議員は、韓国が牛肉輸入制限を解除しなければFTAの審議には応じられないと既に表明している。全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)、韓米間で”商業的に持続できる(つまり少々の骨が入っていても輸入停止されない)牛肉貿易”が始まるまで韓米FTAを支持しないと言っている。

 Enzi: Senators Want South Korean Border Open To U.S. Beef,Cattle Network,4.2
 http://www.cattlenetwork.com/Content.asp?ContentID=118576
 NCBA: Statement On U.S.-South Korea Free Trade Agreement,Cattle Network,4.2
 http://www.cattlenetwork.com/Content.asp?ContentID=118368

 なお、OIEが米国に”管理されたリスク”のステータスを与えたとしても、米国が韓国や日本などに輸入を要求している30ヵ月以下の米国産牛の肉(骨入りも含め)が安全だとか、リスクが微小だとかが保証されるわけではない。”管理された(コントロール=制御された)リスク”とは、適切な安全対策によりリスクが微小に”制御”されていることを意味するが、特定危険部位(SRM)が未だに飼料原料から排除されず、家畜個体識別・トレーサビリティーも未完のために有効なサーベイランスも不能で、またBSEが発生しても発生農場や擬似患畜の特定さえできない国で、どうしてリスクが”制御”されているなどと言えようか。当然ながら、「OIEの勧告は基準として利用するとはいえ、それにこだわる必要はない」という立場は日本も貫かねばならない。

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