豪州 牛肉を輸出したければ十全なトレーサびりティを BSE発生国からの輸入開始に向けて  

農業情報研究所(WAPIC)

10.4.9

 オーストラリアの動植物検疫評価機関をなすバイオセキュリティ・オーストラリアが4月8日、人間が消費するための牛肉・牛肉製品の米国・カナダ・日本からの輸入のリスク評価を公式に始めると発表した。オーストラリア政府は、3月1日から狂牛病(BSE)発生国からの牛肉・牛肉製品の輸入禁止を解除すると決定したが、国内の猛反発でその実施を延期、発生国からの輸入のリスク分析を一からやり直すとしていた(オーストラリア 狂牛病発生国からの牛肉輸入解禁を撤回 リスク分析をやり直す,10.3.9)。今回の公式輸入リスク評価には、このBSEにかかわるリスク分析が含まれる。

 ⇒Commencement of IRAs for the importation of beef and beef products from the United States, Canada and Japan

 さて、米国、カナダ、日本はこのリスク評価をクリアできるだろうか。3月1日に発効した”BSE:人間消費向け牛肉および牛肉製品の輸入要件”によれば、オーストラリアへの輸出を望む国は、”オーストラリアBSE食品安全評価委員会”にリスク評価を申請しなければならない。評価の要請は、安全を証明するためのオーストラリアの質問に完全に答える文書を伴わねばならない。

 AUSTRALIAN QUESTIONNAIRE TO ASSESS BSE RISK
 http://www.foodstandards.gov.au/_srcfiles/Questionnaire%20to%20Assess%20BSE%20Risk%2023%20Feb%2020101.pdf

 リスク評価の公式開始に際し、バイオセキュリティ・オーストラリアの最高責任者であるコーリン・グラント博士は、”輸出向けに生産される牛肉がBSEフリーであると識別できる必要がある”、オーストラリアに牛肉を輸出したい国は、オーストラリアの家畜識別システムと同じである必要はないが、”十全な”トレーサビリティ・システム”を持つことを証明せねばならないだろうと述べたそうである。

 Biosecurity Australia begins BSE beef import risk analysis,ABC Rural News,4.9
 http://www.abc.net.au/rural/news/content/201004/s2868509.htm

 とりわけ、家畜識別追跡国家プログラムを「スクラップ」した米国が”十全な”トレーサビリティ・システム”を持つと言えるのだろうか。

 日本の赤松農相と米国のビルサック農務長官は8日の会談で、中断している両国間の専門家技術協議の再開に合意した。ビルサック長官は、月齢制限撤廃に向けた中間的措置として、とりあえず30ヵ月齢未満まで制限を緩和することを暗に求めたという(日本農業新聞、4月9日、第1面)。しかし、ここでも重要なのは、”生産される牛肉がBSEフリーであると識別できる”というオーストラリアの視点である。トレーサビリティは不十分、BSE検査も拒否、 強化された(それでも不完全な)飼料規制も始まって半年も経たない(米国 BSE新飼料規制が4月27日に発効 準備のために義務遵守は10月26日から,09.4.23)、それで、生産される牛肉が”BSEフリー”とどうやって”識別”できるのだろうか。