米議会リーダー BPA使用飲食料品容器全てを禁止する法案の提出へ

農業情報研究所(WAPIC)

09.3.15

 3月13日、米議会上下院のリーダーが、ビスフェノールA(BPA)を使って製造されたすべての飲食料品容器の販売を直ちに禁止する法案を提出すると発表した。

 前日、BPAの安全性は確信できないとして、石油化学メーカーのSunoco社が、3歳以下の子供向けの飲食料品容器にBPAを使う企業にBPAを販売することを拒否すると発表した。先週は、6つの哺乳瓶メーカーがBPA使用を止めると発表した。

 子供向けのみならず、すべての製品でBPAを禁じる議会リーダーの動きは、このような動きをはるかに超える。科学者や環境活動家はこの動きを歓迎している。しかし、その一部は、人々がどのようにしてBPAに暴露されるのかを研究することがもっと必要だと、なお心配している。

 10年以上前からBPAの動物への影響を研究してきたワシントン州立大学のパット・ハント教授は、「これは氷山の一角にすぎない。最近の研究は、汚染された食料や飲料だけでは人の血液で報告されるレベルを説明するには十分でない。この 化学物質にどのようにして暴露されるかについて、もっと知る必要があるのは明らかだ」と言う。

 BPAは、哺乳瓶、めがね、CDなど、何千もの家庭用品に使われている。検査されたほとんどすべてのアメリカ人から検出されている。研究は、これを乳癌、前立腺癌、糖尿病、心臓病、多動性と関連づけてきた。 昨年秋には、乳癌治療に使われる抗癌剤の効果を殺ぐという研究も現れた(カナダ ビスフェノールAを毒物指定 含有哺乳瓶禁止や環境放出規制を提案,08.10.22)。乳癌基金のジャネット・ヌーデルマン政策ディレクターは、「これは大変強力で、胎盤を通過して胎児に悪影響を及ぼす化学物質だ」と言う。

 去年の規制案は、投票にかけられることなく葬り去られた。しかし、禁止を求めて活動してきた”環境ワーキンググループ”のサンドラ・シューベルト対政府交渉ディレクターは、「哺乳瓶メーカーやBPAメーカーにさえ安全性への不安が広がっており、禁止支持は一層広がるだろう」、(今紹介している記事の掲載紙である)ジャーナル・センチネルがBPAの危険性を軽く見せようとする産業の動きを報じたことから、議員の目も開いたと言う。

 米国食品医薬品局(FDA)は昨年、化学産業が資金を供給した二つの研究以外の研究も考慮する必要があるという科学諮問委員会の意見にもかかわらず、BSAは安全に使用できると判定した。ジャーナル・センチネル紙は、FDAの意見のすべてが化学メーカーや関連投資家によって書かれたものであることを暴露した。

 彼女(シューベルト)は、法案はFDAのオーバーホールを目指すより大きな法案に付帯するものになるだろう、「今年こそは投票されると思う」と言う。

 昨年、ジャーナル・センチネル紙のために行われた10のパッケージ食品の検査は、マイクロウェーブまたはオーブンで指示されたとおりに暖めたとき、すべてから有毒なレベルのBPAが溶脱することを発見した。

 検出された量は、科学者が実験動物で、神経よよび発達障害を引き起こすことを発見したレベルだった。それが引き起こす問題には、生殖器欠損、行動の変化、乳腺の異常発達が含まれる。乳腺の変化は、高い乳癌リスクのある婦人に見られるものと同じだった。

 同紙は258の科学研究をレビューしたが、大多数の研究は、この物質が乳癌、精巣癌、糖尿病、多動、肥満、精子の数の減少、流産などを引き起こし、実験動物に有害であることを示すものであったという。

  Bills Would Ban BPA From Food and Drink Containers,Milwaukee Journal Sentinel,3.13
  http://www.jsonline.com/watchdog/watchdogreports/41215752.html

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