農薬に暴露される農業者はリンパ腫前駆細胞をもつ フランス農業者の疫学・生物学的研究

農業情報研究所(WAPIC)

10.2.8

  ル・モンド紙によると、2月5日、マルセーユっで開かれたシンポジウムで、2005年に始まったフランス農業共済組合加入者を対象とする農業活動と癌の関係に関する調査研究(フランス農業共済 パーキンソン病と農薬への職業的暴露の関係の究明へ)の結果が報告された。この研究により、農業者の農薬暴露と発癌につながり得るゲノムの異常性の間に関連性が存在することが明らかになった。それは、リンパ節癌の早期発見戦略につながる可能性があるという。

 Les agriculteurs exposés aux pesticides portent des précurseurs du cancer,Le Monde,2.6
 
http://www.lemonde.fr/planete/article/2010/02/06/les-agriculteurs-exposes-aux-pesticides-portent-des-precurseurs-du-cancer_1301932_3244.html#ens_id=1299588

 フランスの農業者社会保障機構をなす農業者共済組合(MSA)の多数の加入者を対象とするこの研究は、質問に基づく疫学的側面と血液採取による生物学的側面から構成される。研究者は、農業者の間ではリンパ系癌のリスクが高いことを示す研究結果を2008年に発表、その後、癌防止連盟(Ligue contre le cancer)の財政的支援を得て研究を継続、既に2009年6月に Experimental Medicine.誌に発表された新たな研究結果を得た。

 そのアイデアは、農薬に暴露されたすべての人がリンパ腫に発症するのではないのだから、それを予見するバイオマーカーを発見することだったという。

 研究者は、調査に参加した多数の人々から採取した血液中に、通常は存在せず、濾胞型リンパ腫を構成する腫瘍細胞の前駆をなす細胞を発見した。研究者は、「我々は、農業者の農薬暴露と遺伝子異常及び癌の前駆をなすこれら細胞の増殖との分子的関連を証言するバイオマーカーを明証した。この影響は暴露の量と時間に比例する」と言う。

 研究者は、染色体14の断片が切り離され、染色体18上に位置する癌遺伝子を活性化させるという遺伝子異常を確認した。農薬に暴露された人の一定の血液細胞(リンパ球)中には、暴露のない人よりもずっと高い頻度でこの遺伝子異常が存在する。そして、この発癌遺伝子の発現の制御の欠如が、自死するはずの細胞を増殖させることになるのだという。

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