農業情報研究所>環境>農薬・化学物質・有害物質>2017年11月11日)
イギリスもネオニコチノイド全面禁止へ ポリネーター減少が食料生産に重大影響
農業生産への悪影響を理由にネオニコチノイド系殺虫剤の農業用使用の規制に反対し続けてきたイギリスが態度を一変、近々その全面禁止に踏み切る。この方針を明らかにしたマイケル・ゴーヴ環境相によれば、この決定はネオニコチノイドが(農地を超えた)環境全体(whole
landscape)を汚染し・ハチのコロニーを破壊してきたことを示す最近の新たな証拠によって正当化される。
彼は、ネオニコチノイドがハチの固体ではなく、集団(生息数)に悪影響を及ぼすことを示した7月発表の画期的フィールド研究(注1)や、世界中の蜂蜜の殺虫剤汚染を明らかにしたグローバルな分析(注2)など、ネオニコチノイドがポリネーターに有害である証拠は2013年以来、ますます強力になってきたと言う。
彼によれば、新たな証拠は、ネオニコチノイドがわれわれの環境に対して、特にわれわれの1000憶ポンド(15兆円)の食品産業において枢要な役割を演じるハチやその他のポリネーター(授粉・送粉動物)対してもたらすリスクは、以前考えていたより大きいことを示している。「何事においてもそうだが、環境悪化は結局は悪い経済ニュースだ」、ポリネーターは年4億ポンドから6.8億ポンドの作物収量・品質維持効果をもたらすが、例えば、ガラ(リンゴ)農家今や、失われた自然のポリネーターに代わってする仕事(授粉作業)のために年に570万ポンド支払わねばならないという。
UK
will back total ban on bee-harming pesticides, Michael Gove reveals,The Guardian,17.11.9
ネオニコチノイドは世界で最も広く使われている殺虫剤である。しかし、EUは2013年、そのポリネーターへの悪影響を減らすべく、ミツバチの活動期に開花する作物への一定ネオニコチノイド系殺虫剤の使用を一時禁止する規制措置を決めた(注3)。農業への悪影響を理由に、この規制に反対の先頭に立ったのがイギリスだった。欧州委員会は今、温室室内以外でのその使用の全面禁止を考えている。これをめぐる加盟国の投票も12月に行われる予定だ。ここにきてのイギリスの態度変更は、EUにおけるネオニコチ農業用使用の全面禁止に向けた動きに弾みをつけるだろう。
(注1)参照:ネオニコチノイドのハチの健康に対する影響―二つの最新研究の紹介,農業情報研究所17.9.29;ハチ(ポリネーター)とネオニコチノイド 北林寿信 『科学』<岩波書店> 2017年11月号
(注2)参照:世界中の蜂蜜にネオ二コチノイド 半分近くは授粉動物に有害なレベル 農業情報研究所 17.10.6
(注3).
EUは2013年12月、ハチを惹き付ける植物と冬穀物(秋播き穀物)を除く穀物の種子・土壌・葉面処理に3種のネオニコチノイド殺虫剤(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)使うことを禁じる2年間のモラトリアムを始動させた。これは、①作物の花粉と花蜜の中の残留薬物を通しての暴露、②処理された種子の播種または顆粒施用のときに生じるダストを通しての暴露、③処理作物から生じる溢液中残留物を通しての暴露という、主要な三つの暴露ルートに焦点を当てた欧州食品安全(EFSA)のリスク評価を受けたものだった。
しかし、フランス養蜂者同盟(UNAF)によれば、EUの3種のネオニコチノイド使用モラトリアムにより、クロチアニジンとチアメトキサムの販売量は72%減ったものの、その代替品として使われるネオニコチノイド系殺虫剤・チアクロプリドの販売量は2.5倍にも増えた。イミダクロプリドの販売量はモラトリアムにもかかわらず減っておらず、これは藁を利用する穀物への使用が禁じられなかったからだ、イミダクロプリドは今やフランス表流水の最大汚染物質になっていると、EUの部分禁止を批判している。 |