農業情報研究所環境農薬・化学物質・有害物質201712月3日)

ネオニコチノイド 渡り鳥の方向感覚も狂わせる 北米の小鳥に関するカナダの新研究

カナダ・サスカチュワン大学の実験が、ネオニコチノイド系殺虫剤が北米大陸の鳴鳥類の生存と繁殖のチャンスに重大な影響を与えることを明らかにした。

 研究対象に選ばれたのは、アラスカ、カナダ、米国北部と西部・繁殖し、冬季は米国南西部からメキシコに渡り越冬するwhite-crowned sparrow(スズメ目ホオジロ科のミヤマシシド)、渡りの途中で捕まえ、低容量、高容量のイミダクロプリドを3日間、毎日与えた。これらの鳥が渡りの途中でイミダクロプリド処理のトウモロコシやカノーラ(セイヨウアブラナ)の種を食べるのに擬した。

影響はイミダクロプリドで被覆処理されたキャノーラの種を三つ四つ(トウモロコシなら一つ)食べたところから現れた。胃に異変をきたし食べるのをやめ、体重は容量に応じて1725%減少した。また渡りの方向(北方)感覚も失った。

 14日後には体重も方向感覚も戻った。ただ、一時的にせよ、渡りの途中でこのようなことが起きれば、渡りが遅れ、渡りのルートも間違える。これは生残のチャンスや繁殖機会にも重大な影響を与えるという。

 Imidacloprid and chlorpyrifos insecticides impair migratory ability in a seed-eating songbeird,Scientific Reports,2017.11.9

 ネオニコチノイドの鳥への影響に関する研究は少ないが、イミダクロプリドによる昆虫の減少が小鳥の餌を減らし、それが小鳥の数の減少を引き起こしているというオランダの研究はよく知られている。

 ネオニコチノイド系殺虫剤が小鳥の減少と強く関連 オランダの新研究が実証 農業情報研究所 14.7.10

   なお、ネオニコチノイドがミツバチの方向感覚を奪い、帰巣できなくさせるという研究については次を参照。

 ネオニコチノイド系農薬のミツバチ帰巣能力への影響 天候と景観で大きく変わる フランスの新研究 農業情報研究所 14.7.16 

 ネオニコチネイド系殺虫剤がミツバチを減少させる 二つの新研究が立証 農業情報研究所 12.4.6