英国国営医療サービス 温室効果ガス削減のために肉無し病院食

農業情報研究所(WAPIC)

09.1.26

  ガーディアン紙によると、英国国営医療サービス(NHS)が温室効果ガス排出削減戦略の一環として、病院食における肉無しメニューを促進する。

 NHSは27日、建物のデザインから輸送、食料、水、エネルギーの利用に至るまでの患者ケアのあらゆる側面にかかわる温室効果ガス削減計画を発表する予定だが、最も論議を呼ぶのは食事から肉と酪農製品を減らすことで病院が温室効果ガス排出を減らすことができるという提案になりそうだという。

 昨年、気候変動に関する国連政府間パネル(IPCC)議長のラジェンドラ・パチャウリ博士(07年ノーベル平和賞受賞)は、飼料作物への化学物質散布や牛・羊が吐き出すメタンのために、人々が毎週肉無しデーを設けることが個人レベルでの最大の気候変動抑制策と講演している。ドイツ連邦環境当局は先週、特別の機会にのみ肉を食べるようにとまで勧告した。

 NHSによると、このような動きは、動物や鶏を育てることによる大量の温室効果ガス排出を減らし、健康を改善する。NHSは昨年、1億2900万食を提供した。すべてのメニューに肉を期待すべきではない、新鮮な食料、果実・野菜を増やすことが望ましく、地方経済振興にも役立つと言う。

 NHSは昨年、二酸化炭素排出に関する公共部門最大とされる分析を発表したが、NHSの04年の排出量は1860万トンで、なお増加中であった。これはイングランドのすべての排出の3%に相当、NHSは世界で81番目の巨大汚染者にランクされた。5分の1は輸送、別の5分の1は建物からの排出で、残りが薬品、医療設備、食料からの排出だった。

 発表予定の報告は次のように論じているという。

 炭素排出の削減は設備・医薬品・エネルギー・水・廃棄物のための費用を減らし、例えば、短期的には人々が歩くように促すことにより、長期的には気候変動の影響を減らすことによって健康も改善する。

 「我々すべてがいま行動しなければ、世界中の夥しい数の人々が、気候変動が原因の飢餓、水不足、沿岸の洪水に苦しむことになる」。

 世界最大の組織の一つとして、NHSは実効ある行動を行い、重要な模範例を示す国家的・国際的義務を有する。 

 Hospitals will take meat off menus in bid to cut carbon,Guardian,1.26
 http://www.guardian.co.uk/society/2009/jan/26/hospitals-nhs-meat-carbon

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