農業情報研究所環境気候変動・災害・砂漠化・水問題等ニュース:2011年2月24日

ブラックカーボン、地表オゾンの削減で温暖化速度が半減 国連環境計画の研究

 国連環境計画(UNEP)が2月16日に発表した研究によると、長期にわたって大あ気中にとどまる二酸化炭素よりも、より短命なブラックカーボン(農作物残滓の野焼きやディーゼル燃料の燃焼から生じるすすの一構成要素)や地表(対流圏)オゾンの排出の削減に力を注ぐことで、今世紀前半に予測される温暖化を半減させることができる。

 ブラックカーボンは人間の健康を害し、雪融けを速めることで知られる。地表オゾンは農作物や人間の健康に悪影響を及ぼすことで知られる。研究によると、この二つの大気汚染物質の排出を減らすことで、地域における健康が改善されるだけでなく、今世紀前半の温暖化の進行を大きく遅らせることができる。

 大気中に長くとどまる二酸化炭素の削減の効果が現れるまでには長い時間がかかり、どんな削減努力も、この先20年から30年の温暖化の抑制にはほとんど効果がない。二酸化炭素削減だけでは、地球の平均気温は、2050年までに産業革命以前に比べて2℃は上昇する。しかし、ブラックカーボンと地表オゾン(メタンも含め)の削減は、危機的ラインと言われるこの気温上昇を20年、つまり2070年まで遅らせるだろうという。

 研究は、ブラックカーボンについては作物残滓野焼きの禁止、工業的コークス炉の近代的回収炉への転換、途上国の調理や暖房へのクリーンなバイオマス・ストーブの導入、車の排ガス規制強化(高排出車の排除)、地表オゾン・メタンについては廃水処理の改善、家畜からのメタン排出の抑制、長距離パイプラインからの排出の削減などを勧告する。

 研究は、特に中国、インド、ブラジル、南アフリカなどの途上国自治体の汚染管理当局に狙いを定めたものという。

 Integrated Assessment of Black Carbon and Tropospheric Ozone,UNEP,2011,2.16
 http://news.sciencemag.org/sciencenow/Integrated%20Assessment%20of%20Black%20Carbon%20low%20res.pdf

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