農業情報研究所環境気候変動ニュース 2017年89 

 

米国連邦政府機関の手に成る未公表気候変動リポート ニューヨークタイムズ紙が入手 トランプ政権は握り潰し?

 

 ニューヨーク・タイムズ(NY)紙が13の米国連邦機関科学者の手に成る未公表の気候変動に関するリポート(草稿)のコピーを入手した。それによると、米国の平均気温は1980年以来急速かつ劇的に上昇しており、最近数十年は過去1500年間で最も暖かかった。リポートは、アメリカ人は、今まさに、気候変動の影響を実感していると結論する。その主張は、気候変動への人間の寄与は不確かで、影響の予測能力は限定されているというトランプ大統領とトランプ政府閣僚たちの主張と真っ向から対立、 「気候変動の証拠は大気から深海まで山と積み重なっている」と言う。

 

Scientists Fear Trump Will Dismiss Blunt Climate Report,The New York Times,17.8.7

 

リポートは、議会が4年ごとに義務付けるナショナル気候アセスメントの特別科学セクションを成す。それは全米科学アカデミーが既に署名、著者たちはトランプ政府による公表許可を待っている。リポート作成にかかわった一科学者はNY紙に対し、匿名を条件に、自分も他の科学者たちも、それが握り潰されるのを恐れていると話したそうである。

 

パリ条約から離脱したトランプ政権のこと、このリポートも闇に葬られる可能性は否定できない。NY紙が折角入手したコピー、この際、その内容をもう少し詳しく紹介しておこう。

 

●人間が今すぐ温室効果ガス(GHG)の大気中への放出をやめたとしても、今世紀末の世界の気温は現在に比べて少なくとも華氏0.50度(摂氏0.30度)高くなる。現実には2℃の上昇が予測される。

 

●地球の気温の僅かな違いも、一層の熱波、豪雨、珊瑚礁崩壊など、気候の大きな変化をもたらし得る。研究が発見した最も重要なことの一つは、一部の極端な気象事象が気候変動の結果である(attribute)とあるということだ。気候変動のリスクの増大とともに、“attribution science”として知られる分野が急速に発展した。

 

●それでも、個々の極端な気象事象と気候変動の関連については不確実性が残る。例えば、2003年のヨーロッパの熱波(ヨーロッパを襲う旱魃、模索される救済策,03.7.25EU農業団体、ヨーロッパの猛暑・干ばつ・森林火災被害評価を発表,03.10.11・・・)や2013年のオーストラリアの記録的暑熱については、それが人為的要因によることを示す「比較的強力な証拠」がある。しかし、2011年にテキサスを焼け焦がした熱波はもっと複雑だ。地方的な天気の変わりやすさとラ・ニーニャが主因で、温暖化の寄与は「比較的小さい」。別の研究は、気候変動はテキサスの極端な事象を20倍に増やしたとしている。

これらの、またその他の相反する諸研究に基づき、リポートは、テキサスの熱波において気候変動が果たした役割はそれほど大きくもなければ小さくもない(medium)と結論している。  

 

 それは、一般的に米国における最近の主要な干ばつの人間活動との関連は複雑だと、他の個別の極端な事象と気候変動の関連性のアセスは避けながらも、 多くの干ばつが長引き、厳しさを増している現実は地球の水文学的な自然変動において前例がないと言う。
 

●米国の平均気温は上昇を続けるだろう。最近の記録破りの年も、近い将来は普通になる。将来のGHG排出のレベルに依り、世紀末までには華氏で5.0度から7.5度(2.8℃から4.8℃)上昇する。

国の年降水量は20世紀初めより4%増えた。西部、南西部、南東部は干上がりつつある一方、南部平原と中西部は湿潤になりつつある。

米国西部、北部の気温上昇は中位の信頼度で人間が引き起こした温暖化と関連づけられるが、南東部では直接の関係は認められない。

アラスカと北極の温暖化は世界平均の2倍の驚くべき速さで上昇しており、沿岸コミュニティを脅かす海面上昇を含む海洋の変化をもたらす土地と海氷の融解によって米国に重大な結果をもたらす。

 

●人間活動が第一の犯人である。破局を避けるためには地球の平均気温上昇を2℃以内に抑える必要があり、そのためには地球の二酸化炭素レベルを大きく減らさねばならない。

 

こんな身内作成のリポートも握り潰すようなら、トランプ政権も1年ともたないだろう。都合の悪い情報はすべて握り潰すどこかの国の一強政府と同然だ。その国は、原発事故と太陽光発電(メガソーラー)による炭素吸収源(森林・原野)の大々的破壊で自国と地球の破局を早めるのに”attribute”し続けている原発林立の地震大国、山を削って太陽光、世界広しと雖もそんな国はどこにもない。温暖化を待つまでもなく真っ先に滅びるだろう。