英国BT社、すべての消費電力をクリーンエネルギーから

農業情報研究所(WAPIC)

04.10.15

 14日付のフィナンシャル・タイムズ紙(*)によると、英国電気通信グループのBT社がグリーンエネルギー源からすべての電気を調達することを誓う世界最大の企業になる。同社は14日、電気供給業者npowerとブリティッシュ・ガスとの3年間の契約を発表するが、この契約に基づき、そのエネルギーが風力発電や波力発電などの更新可能なエネルギー源と、熱電併給の低炭素発電技術の混合から来るように保証されるという。契約額は数百万ドルに相当する。

 同社は、「エネルギー効率の改善と大気中への[二酸化炭素]排出の削減を目指しており、両方の目的を達成できると信じる」と言っている。非営利組織の”Climate Groupe”によると、同社は91年以来のエネルギー効率政策で1億1900万ポンド(1ポンド=約200円)、グリーン輸送で4億2100万ポンドを節約してきたという。

 英国政府は京都議定書による削減目標を上回る温室効果ガス排出削減(2010年に90年レベルから20%削減)を目指しているが、ブレア首相も、BTの動きは、「温室効果ガス排出の大幅削減が経済成長を犠牲にするに及ばないことの生きた証明」と歓迎している。自然保護団体・WWFの企業関係マネージャーのダックス・ラブグローブ氏も、「更新可能なエネルギー源からのエネルギー供給の利用は非常に建設的な決定だ。それは、石油価格高騰に照らし、企業にとってのエネルギー・コスト安定にもつながる」と歓迎している。また、Climate Groupeの最高責任者であるスティーブ・ハワード氏は、「BTの決定は更新可能なエネルギーが主流になりつつあるという明確なメッセージを送るもの。ヨーロッパ中のエネルギー企業がこの協定に強い関心を示している」と言う。

 BTの電気消費は、英国の非家庭用電気消費の1.8%を占める。二酸化炭素排出削減効果は年に32万5000トン、これは、5万世帯、または10万台の自動車の排出量に相当するという。

 今年6月の報告(EEA Signales 2004)で、欧州環境庁(EEA)は、EU25ヵ国の総エネルギー消費は90年代半ば以来増え続けており、この趨勢は今後も続く、温室効果ガスの主要排出源である化石燃料燃焼は、今後30年間、ヨーロッパの最大のエネルギー源としてとどまるだろう、このままでは京都議定書の目標達成も難しいと警告した。それは、更新可能なエネルギーは絶対量では増えているが、シェアでは大きな増加は期待できず、原発の寄与もいくつかの国のモラトリアムや段階的廃止の結果として減るだろう、持続可能なエネルギーへの移行には、すべての部門でのエネルギー節約、エネルギー効率、更新可能なエネルギーの大幅な増加が必要だと訴えている。

 更新可能なエネルギーについて言えば、そのエネルギー消費全体におけるシェアを、EU全体で2010年までに21%に増やす目標が掲げられている。しかし、EU25ヵ国のそのシェアは、90年の12%から91年の14%に増えたにすぎない。最大の供給源である水力(更新可能なエネルギーの85%を占める)は、環境配慮やサイトの欠乏で今後の伸びは期待できない。風力、バイオマス、太陽、小規模水力発電などの大幅な増加が不可欠な要請となっている。

 他方、温暖化がもたらす破滅的影響は既に現実のものとなっているという認識が否定し難いものになっている(⇒欧州環境庁、気候変動の影響で報告書 適応戦略の必要性を強調,04.8.19)。ヨーロッパでは、EEAの訴えに耳を貸そうとしない企業は存続も脅かされるような社会全体の雰囲気が醸成されつつある。それがBTを動かしたのだろう。さらにそれがヨーロッパ中の企業を動かすことになれば、現在の更新可能なエネルギーへの動きの遅滞を打ち破ることも可能になろう。上から下まで、依然として経済最優先の日本では、想像もできない動きだ。

 *UK telecoms group in green power deal,Financial Times,10.14,p.6

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