インドのヤトロファディーゼル計画 遅れる種子開発 経済的にも存続不能

農業情報研究所(WAPIC)

09.4.20

 インド国家計画委員会は、2017年までにヤトロファから生産される1,300万トン(ディーゼル消費量の20%)のバイオディーゼルをディーゼルにブレンドするように勧告した。そのために、政府はヤトロファ栽培を含む様々なバイオディーゼル促進策を講じた。しかし、ヤトロファなど、どこに植えられているの?これがHindu Business紙が伝える現実である。

 Jatropha cultivation hit by land, viability issues,Hindu Business,4.18
 http://www.thehindubusinessline.com/2009/04/18/stories/2009041850791600.htm

 科学者たちは、高品質のヤトロファ種子の開発研究は幼児段階にあると言う。マディヤプラデシュ州ヤトロファ開発委員会と国家油料種子・植物油開発ボードの委員であるV.K. Gour博士によると、大規模栽培用の高品質ヤトロファを突き止めるには、少なくとも 2-3年はかかる。ヤトロファ促進・バイオディーゼルセンターが油分が多い高収量種子の開発中だ。ヤトロファプログラムが始まって5年経ったが、安定したヤトロファ栽培にはあと5-6 年はかかる、生産者に適したヤトロファを推奨するには、さらに2年かかるという。

 問題は、少なくともヘクタールあたり3トンを産出する高品質種子の開発だけではない。同センターの Vikas Sharma博士によると、.ヤトロファ栽培のために荒れ地を配分すると言っていた多くの州が、未だにまったく配分していない。ある州では、ヤトロファ栽培のための土地が民間企業に配分されたが、これら企業は、銀行ローンを獲得するために、この土地を抵当に入れてしまった。

 タミル・ナドゥ農業大学農業工学カレッジのM. Paramathma博士によると、タミル・ナドゥ州はヤトロファ栽培に4万fを割り当て、苗木に50%の補助金も提供している。中央政府は1,300万fでヤトロファ栽培が可能で、さらに400万fの追加も可能と見ている。しかし、博士は、問題は現在の政府支持価格では、ヤトロファからのバイオディーゼル生産は経済的に存続できないと言う。Vikas Sharma博士は、少しばかりのパイロット工場が作られたが、2年以内に商業生産を見ることはない、明確なバイオディーゼル政策がないと言う。

 D1オイルを含むいくつかの民間企業がジョイントベンチャーを立ち上げ、ヤトロファ生産のための契約農業に参入したが、専門家は農民が適正な価格を得る保証はないと言う。インド国営石油会社やバーラト石油などの企業も関心は持っているが、ヤトロファ栽培に関しては成績を見守る段階という。

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