EUバイオディーゼル生産に急ブレーキ　2020年に輸送用燃料の１0％の目標は達成困難

農業情報研究所（WAPIC）

09.7.16

  EUのバイオディーゼル産業団体・欧州バイオディーゼルボード（EBB）が7月15日、EUバイオディーゼル産業の現況を明らかにするプレス・リリースを出した。

　EBB Press Release:2008-2009: EU biodiesel industry shows resilience amid unfair international competition and degraded market conditions,7.15
　http://www.ebb-eu.org/EBBpressreleases/EBB%20press%20release%202008%20prod%202009%20cap%20FINAL.pdf

　2008年のバイオディーゼル生産は770万トンで、2007年に比べて35.7％増えただけだった。2005年には65％、2006年には54％と急成長したが、2007年には16.8％と成長に急ブレーキがかかった。このままでは、3000-3500万トンが必要となる輸送燃料の10％をバイオ燃料とするというEU指令の2020年目標は到底達成できないという。

　このような成長減速の原因は何か。EBBは、米国産バイオディーゼルの補助金付き及びダンピング輸出をはじめとする不公正な国際競争と、再生可能エネルギー指令採択をめぐる08年の政治的論争（EU再生可能エネルギー利用促進指令採択　ブラジルエタノール業界が安堵の声,08.12.20；EU、バイオ燃料の持続可能性確保で欧州議会案から大きく後退,08.12.11）がもたらした市場の不安定が主因であると主張する。

　不公正な米国バイオディーゼルがEU市場を席巻する前に立てられた投資計画を反映する2009年の生産能力は2100万トン近くに増え、2009年7月時点でのバイオディーゼル工場は276に達している。しかし、2008年と2009年のEBB統計によると、既存工場の少なくとも半分が遊休状態にある。その主な理由が、不公正な国際競争と、将来の不確実な市場だという。

　米国からの補助金付き及びダンピング輸出については、EUは今年3月、暫定課税措置を取り（EU　米国からのバイオディーゼル輸入にダンピング防止・補助金相殺関税,09.3.13）、今月7日には、これを5年間の確定措置に移行させた。

　COUNCIL REGULATION (EC) No 598/2009 of 7 July 2009 imposing a definitive countervailing duty and collecting definitively the provisional duty imposed on imports of biodiesel originating in the United States of America,09.7.10
　COUNCIL REGULATION (EC) No 599/2009 of 7 July 2009 imposing a definitive anti-dumping duty and collecting definitively the provisional duty imposed on imports of biodiesel originating in the United States of America,09.7.10

　しかし、一般特恵制度を利用したアルゼンチン、マレーシア、インドネシアからのEU市場に対する輸出ドライブがかかっている。これに対する何らかの対処が必要だ（と言いたいようだ）。

　他方、安定した市場の確保のためには、

　�@EU各国がバラバラな持続可能性基準（10％にカウントできるバイオ燃料の基準）を採択してはならず、

　�A間接的土地利用変化の温室効果ガス排出への影響の問題は経済事業者の過大な負担につながるような扱いをしてはならず（EU指令は、「欧州委員会は、2010 年12 月31 日までに、間接的土地利用変化のGHG 排出への影響を見直し、この影響を最小限にする方法に取り組む報告を欧州議会と理事会に提出せねばならない」としている。→EU再生可能エネルギー利用促進指令のバイオ燃料持続可能性基準（仮訳）,08,12.26）、

　�B石油ディーゼルへのバイオディーゼルのブレンド比率の上限を現在の5％から10％に引き上げねばならない、

　などとしている。

　なお、EU27ヵ国における2007年と2008年のバイオディーゼル生産量、2008年と2009年のバイオディーゼル生産能力は、下の表のように推定されている（単位：1000トン）。