トウモロコシ原料燃料エタノール生産が国の食料安全保障を脅かす―チャイナ・デーリー紙

農業情報研究所(WAPIC)

10.7.9

  チャイナ・デーリー紙が伝えるところによると、今年中国全土を襲った干ばつと洪水による食料供給への不安が、バイオ燃料が食料安全保障を脅かすという中国における論議を再燃させている。

 Fuel ethanol production threatens food security,CD,7.8
 http://www.chinadaily.com.cn/china/2010-07/08/content_10082132.htm

 上海証券報は7日、燃料エタノールの主要原料であるトウモロコシの価格がこの1年で20%上がっていると伝えた。今年の気象災害が引き起こしたトウモロコシ生産の減少がその一因だが、燃料エタノール生産企業からの需要の増加も価格上昇をあおっているのではないかと疑われるという。

 中国総商会のZhao Youshan石油販売委員長は、「燃料エタノールの生産は多くの食料を犠牲にするだけでなく、中国のエネルギー安全保障の大した助けにもなっていない」、「関連プログラムはストップさせるべきで、(エタノール生産企業への)補助金も廃止すべきだ」と言う。

 Zhao氏によると、2004年、新エネルギー開発促進のための4つの地域でのパイロットプログラムを決めたとき、免税だけでなく、生産される燃料エタノール1トンあたり1880元(280ドル)の補助金もエタノール生産企業に与えられることになった。この免税と補助金で国中がエタノール生産に熱狂することになった。2006年までに燃料エタノール生産量は1000万トンを超え、中国は世界第三の燃料エタノール生産国になるとともに、トウモロコシ価格も高騰した。

 国務院は2007年に建設中だった燃料エタノールプロジェクトをストップさせたが、補助金は廃止されず、停止したはずの一部のプロジェクトが蘇った。

 Zhao氏は、「今年の状況は危険だ。一方では、北部と南部が代わる代わる厳しい干ばつと洪水に襲われ、一部地域での食料減産は確実になっている。他方では、一部地域の燃料エタノール企業は食料購入に突進するだろう。この状況が続けば、中国の食料安全保障が大きく脅かされることになる」と言う。

 Zhao氏は先月、パイロットプログラムの停止と補助金廃止を提案する報告を国務院に手渡したという。

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