農業情報研究所環境エネルギーニュース:2011年1月22日

米国 2001年以降モデル車についてE15使用を承認 ただしトウモロコシエタノール産業の救世主とはならず

 米国環境保護庁(EPA)が1月21日、2001〜2006年モデル車(ライトトラックを含む)でエタノール15%ブレンドガソリン(E15)を使うことを認めた。最近完了したエネルギー省のテストで、E15を使っても排気コントロール機器に有害な影響がないことが確認されたという。

 http://yosemite.epa.gov/opa/admpress.nsf/0/8206AB91F87CEC088525781F0059E65C

 EPAは昨年10月、既に2007年以降モデル車のE15使用を認めている(米国EPA 一部新型車のE15燃料使用を承認 エタノール利用増大は期待できず 食料価格が上がるだけ,10.10.14)。新たな決定により、現在路上を走っている車の半分ほどがE15を使えることになる。

 米国の燃料エタノールは、今まではほとんど専ら、オクタン価を上げるためのガソリン添加物として使われたもので、ガソリンへのブレンド率は最大で10%までしか許されなかった。そのために、燃料エタノールの使用量は、最大でも消費されるガソリンの10%にしかならない。すべての地域、季節において10%ブレンドできるわけではないから、実際の最大ブレンド率は10%にはならない(米国バイオ燃料利用目標 エタノールでは達成不能 インフラの壁,11.1.10)。エタノール生産にはこのブレンド率の壁が立ちはだかってきた(下図)。2010年のガソリン総消費量は1400億ガロン(今後は燃費向上でもっと減る)であるから、燃料エタノールの最大使用量はせいぜい130億ガロンにとどまる。ところが、米国の2010年の燃料エタノール生産量は、まさしくこの130億ガロンに達したと推定される(10月までの月平均10.87億ガロンの実績から)。年々伸びてきた生産も今年で頭打ちというわけだ。

 そこでRPAが救世主として登場した。米国の半分の車がすべてE15を使うとすれば、使用量の限界は約170億ガロンにまで増える計算になる。とはいえ、この170億ガロンという数字は、2014年の義務的使用目標量をわずかに上回るすぎない(米国燃料エタノール統計)。EPAによる規制緩和にもかかわらず、生産が成長する余地は4、5年後には再び消えてしまう。このままでは、2022年の360ガロンどころか、2015年の目標の達成も難しい。

 さらに、E15が認められたといっても、必ずしも消費が拡大するわけではない。走行可能距離がガソリンの3分の2ほどのE15は、ガソリンよりも大幅に安なければ消費者が使わない。ところが、原料トウモロコシの価格急騰で、エタノール価格は、やはり値上がりしたガソリンとほとんど変わらなくなっている(1月21日、エタノールのシカゴ先物:2.332ドルに対し、ガソリンのニューヨーク先物は2.459ドル/ガロン)。E15承認も、トウモロコシエタノール産業の救世主とはならないだろう。