農業情報研究所環境エネルギーニュース:2015年10月5日

メガソーラー 「一度飛ばされれば空飛ぶ凶器」 台風で吹き飛び 近隣の民家や車を直撃

  メガソーラー設置のための堤防掘削が鬼怒川堤防決壊の一因となった可能性があると、最近のメガソーラーの急成長、というよりも乱開発に警鐘を鳴らしたのはつい最近のことだ(鬼怒川大水害は人災か ”現代の黄金”メガソーラーが犯した大罪遊休ゴルフ場が続々太陽光発電所に 日本はメガソーラーで洪水列島に国交省 鬼怒川の堤防決壊は「越水破堤」が一因 メガーソーラーのための堤防掘削は問わないのか)。それから一ヵ月も経たないうちに、警鐘を乱打させるようなとんでもない太陽光発電災害が起きていたことが発覚した。今度は水害ではない。メガソーラー付近にはおちおち住んで居られない、特に台風の際にはどこか遠くに避難しなければならないと思わせる”風害”だ。

 10月4日付の毎日新聞が報じるところによると、8月25日に九州を縦断した台風15号で、太陽光発電施設が強風にあおられ、大量のパネルが吹き飛ばされるなど被害が各地で相次いだ。被害はメガソーラーだけだけでなく周囲に及ぶ。

 太陽光発電施設:台風で飛散、民家直撃 国が被害調査 毎日新聞 15.10.4

 福岡県行橋市の50キロワットの施設では100枚以上の太陽光パネルが地中に埋め込まれた支柱ごと強風で浮き上がり、倒壊した。さらに十数枚が吹き飛び、近隣の民家の柱や車などに衝突した。近所の半壊した住宅に住む男性は「あんな恐ろしい光景は見たことがない」と顔をこわ張らせた。

 福岡県柳川市では50キロワット未満の施設のパネル約150枚が吹き飛び、周囲の民家など少なくとも8軒を損壊させた。半壊した住宅に住む高齢の男性は「一部のパネルならまだしも、鉄骨ごと飛んできた。人災ではないか」と不満を抑えきれない。

 被害が報告されたのは、福岡県と鹿児島県の500 キロワット以上の3施設と福岡県行橋市の50キロワットの1施設だったが、50キロワット未満の施設には事故の報告義務がなく、実際の被害はもっと多いとみられるという。 

 どうしてこんなことになるのか。記事は、「太陽光施設は電気事業法などに基づき、日本工業規格(JIS)で市町村ごとに定められた基準風速の荷重に耐えられる設計にすることが発電事業者に義務付けられている」が、国は「原発事故後、国は太陽光の普及を図るため、事業者に義務付けていた稼働前の工事計画書の届け出や自主検査の対象を、500キロワット以上から2000キロワット以上の施設に規制緩和した。2000キロワット未満の施設がJISに適合しているかは基本的に事業者任せ」になっていると、「建築確認のような審査」の欠如(東北大大学院の植松康教授=建築風工学)を問題にしている。

 しかし、原発同様、絶対に安全という規制基準は存在しない。最近の気候の趨勢をみれば、台風に伴う風が「基準風速」(46〜30メートル)を上回る場合も頻々と起きるだろう。先の植松教授によれば太陽光発電施設は一度飛ばされれば「空飛ぶ凶器」だ。太陽光パネルは普通1枚1.3平方メートル、重さ15キロ程度で、主にガラスでできている。こんな大規模施設(下の写真)が吹き飛ばされたら、どれほどの凶器がどれほどの範囲に降りかかるだろうか。とりわけ台風や竜巻の常襲地帯では、こんな危ないものは作らぬに越したことはない。

鹿児島県鹿屋市と大崎町にまたがる土地での国内最大級の太陽光発電所建設について(京セラ)

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