中国 タミフルに代わる抗ウィルス薬開発 新たな鳥インフルエンザ用生ワクチンも

農業情報研究所(WAPIC)

05.12.27

 チャイナ・デーリー紙によると、中国軍事医療科学院の研究グループがタミフル以上に効果的と主張する人間の鳥インフルエンザ新薬を開発した。

 報道によると、 新薬はロシュ社が製造するタミフルと同様、インフルエンザウィルスのノイラミニダーゼ(NA)産生を阻害することでウィルスが細胞から遊離するのを防ぎ、他の細胞への拡散を防ぐ。しかし、分子構造は若干異なる。既に臨床試験を終え、タミフルよりも有効であることを確認した。しかも、各カプセルの価格はタミフルの3分の1と安い。

  新薬は国内企業が生産、H5N1ウィルスによるインフルエンザ・パンデミックに備えて備蓄する。重症患者は薬を飲み込むことが難しいために、、注射による投与の研究も進めているという。

 Drug to treat human case of bird flu developed,China Daily,12.27
  http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-12/27/content_506843.htm

  同紙は前日、農業部の発表として、中国研究者が鳥インフルエンザとニューカッスル病の両方に効く鳥用の生ワクチンも生産したと伝えている。これは注射に加え、経口、鼻腔からの注入、散布によっても利用でき、大量のワクチン接種の労働コストを大きく引き下げるとともに、家禽の免疫も効率的に増強する。しかも、生産コストは、現在市場で利用可能な不活性化ワクチンの3分の1という。さらに、実験では哺乳動物を保護できることも示され、この研究と生産は人間のインフルエンザ用のワクチン開発の参考にもなるという。

 農業部は新たなワクチンの有効性と安全性を確認、12月23日に大量生産を承認した。月末までには10億のショットを生産、来年から利用を開始する。

 China develops first live vaccine against bird flu,China Daily,12.26
 http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-12/26/content_506427.htm

 中国当局は、今年の31件の鳥インフルエンザ勃発のうち、30件までは既に封じ込められ、新たな勃発はないと楽観を強めている。新たなワクチンで今だ完了しない14億の家禽へのワクチン接種を加速、それで完全に封じ込められると考えている節がある。しかし、各家庭が家禽を飼う広大な農村地域の隅々にまで監視の目が行き届かないかぎり、この目標の達成は難しい。人間の感染(今までに6人の感染を確認)を防ぐために、人間と家禽の緊密な接触の慣行を改めることも不可欠だ。それは一朝にしてできることではない。このような長期的な課題への取り組みをないがしろにすることになれば、新たな薬・ワクチンの開発も決して歓迎すべきことではない。

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