中国 人間のH5N1鳥インフルエンザ蔓延に備えてワクチンを備蓄

農業情報研究所(WAPIC)

09.2.12

 中国国家食品薬監督管理局(SFDA)の報道官が11日、起きるかもしれない流行に備え、国内で生産された人の鳥インフルエンザワクチンの備蓄を増強してきたと発表した。ワクチンは北京のSinovac Biotech社が生産したもので、18歳から60歳までの人をH5N1ウィルスとその変種から護るように設計されている。

 報道官によると、今年になって8人が感染、うち5人が亡くなるという深刻な状況を考え、製品の有効性のチェックと備蓄の積み増しを同時に進めるという新たな措置を採用した。ワクチンの生産には時間がかかり、流行が始まる前に十分な量の備蓄が必要だが、この新措置で、もし流行が始まれば直ちに使用できるようになるという。

 SFDAは、2年間の臨床試験の後、2008年4月にSinovacがワクチンの商業生産を始めるのを許可した。これにより、中国は人の鳥インフルエンザワクチンを生産する技術と産業能力を持つ世界で2番目の国になった。中国は、養鶏業者に大損害をもたした鳥インフルエンザ勃発を受け、2005年11月、ワクチンを製造するための臨床研究と実験をスタートさせたという。 

 Drug regulator:China stockpiles bird flu vaccine for possible outbreak,Xinhua,2.11
 http://news.xinhuanet.com/english/2009-02/11/content_10803780.htm

 人のワクチン備蓄も結構だが、それよりも前に鳥の感染と鳥から人への感染の広がりを防ぐことに全力を上げてもらいたい。それとも、そんなことはもう諦めるほどに状況は悪化しているのだろうか。日本も含む国際社会も、中国鳥インフルエンザをめぐる状況への関心が希薄にすぎないだろうか*。

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 *人の感染は急増しているが、鳥の感染はほとんど報告されていないことは専門家も困惑させているようだ。世界的権威を誇る英国ランセット誌が漸くこの問題を取り上げた。ウィルスが変わったのかどうか、どのようにして拡散しているのか、鳥はどう反応しているのか、人にはどうのようにして移るのか、単にサーベイランスと検査がなっていないだけなのか、未だ誰も答えられない。

 http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2809%2960153-7/fulltext