インドネシア、マレーシア・中国の違法木材取締り非協力に手を焼く

農業情報研究所(WAPIC)

05.5.10

 インドネシア政府がマレーシアと中国の違法木材貿易防止への非協力に怒りを顕わにしている。9日付のジャカルタ・ポスト紙によると、林業相が、「高度に破壊的な慣行から巨額の利益を享受している二つの国」との違法木材貿易防止協力の要請を拒否したマレーシアと中国を批難している。林業相は同紙に対し、両国とも、その企業がインドネシアからの違法木材を受け取るために、インドネシアとの具体的協定の調印を避けているように見えると語ったという(China and Malaysia uncooperative, says minister of forestry,The Jakarta Post,5.9)。

 彼は、「違法伐採は原産国だけでなく、受け入れ国の問題でもある。中国とマレーシアのビジネスマンは、違法であるかどうかにかかわらず、わが国の林産品を求めつづけている」と言い、両国ともに、何十億ドルの価値の産業にかかわり、労働力吸収を助けるために、インドネシアとの真面目な協力をためらっていると説明する。

 インドネシア林業省は、主として原料木材にかかわるインドネシアから中国への林産品の過去2年の違法貿易は、900万立方メートル、18億8000万米ドルにのぼると推定する。林業相によると、中国との協定調印失敗は、中国がインドネシアの不平を調査する責任を負う機関を未だ指名していないためだが、それとは別に、中国は、大部分の製品はインドネシアよりもマレーシアから受け入れていると主張している。しかし、インドネシアの違法林産物は常にマレーシアかシンガポールに密輸され、その後に香港に輸出されて「合法化」され、中国本土に達するのだという。インドネシアと中国は、違法貿易の定義の受止め方の大きな違いのために、違法貿易と闘う協定作りに失敗してている。

 他方、インドネシアはマレーシアとの間でも同様な問題を抱え、マレーシアは、違法丸太やその他の製品が国に流れ込むのはインドネシアの法執行の欠如の結果だと主張している。

 インドネシアは、国内・海外の木材需要の増大で違法伐採が跋扈するようになると、2003年に原料木材の輸出を禁止した。しかし、需要が増え続けるかぎり、違法伐採を止めるのは容易なことではない。とりわけ中国の原料材需要の増加は目覚しい。これは、密輸の横行のみならず、中国国内でも違法伐採も横行させているようだ。今年3月には、海南島の路傍のユーカリ等の大量違法伐採に巨大紙・パルプメーカー・Asia Pulp & Paper Co Ltd (APP) がかかわっていることが発覚した(Pulp maker linked to mass tree logging,China Daily,3.18;Paper-making giant probed for illegal logging,China Daily,3.31)。中国の成長に伴う原材料需要の増加は森林にとっても大きな脅威となる。

 インドネシアの違法伐採はわが国も無縁ではない。マレーシアとFTA締結を急いでいるが、違法合板を排除する手立てはどこまで有効に機能するのだろうか。密輸取締りに消極的なマレーシア政府の姿勢からすると、甚だ心もとない。

 関連情報
 パプアの違法伐採木材 世界最大級の密輸摘発 国際犯罪組織が関与の報告,05.2.18
 
欧州委員会、違法伐採と違法伐採木材貿易と闘う包括的措置を採択,04.7.22
 
インドネシア:森林消滅の危機、農民にも脅威,02.9.29
 
インドネシア:違法伐採法が森林破壊を止めるだろう(04.3)
 
インドネシア:警察、30人の違法伐採者を逮捕(04.3)
 
グリーンピース、違法伐採の監視強化を計画(04.3)
 
インドネシア、違法伐採で行動を取れとマレーシアに圧力(04.3)