農業情報研究所環境森林ニュース:2011年11月25

インドネシア パームオイルがオランウータン殺し、森林破壊の最大の元凶にも 

 インドネシア・東カリマンタン警察がオランウータンとテングザルを殺した疑いで2人のオイルパーム・プランテーション労働者を逮捕した。労働者は、オランウータンやテングザルを、いまや世界的な食料(パームオイル)とバイオ燃料(パームオイルディーゼル)の需要増大で”金の生る木”となったオイルパームの林を荒らす害獣と信じるプランテーション・マネージャーに雇われたということだ。二人は、害獣コントロールのために、森林破壊で絶滅が危惧されるオランウータンとテングザルを、少なくとも20頭殺した。

 二人の供述によると、(カリマンタンが属する)ボルネオ島のいくつかのプランテーション・オーナーは、1頭殺すごとにオランウータンについて100米ドル、テナガザルについて20米ドルを支払うという。

 これを伝えるAPの記事によると、世界の野生オランウータンの90%が棲むインネシアは、世界に木材、紙・パルプ、そして最近はパームオイルを供給するために、この半世紀の間に、その雨林の半分を失った。残っている5万から6万の類人猿は、散在する退化した森林内に棲み、しばしばその死につながる人間との争いが頻発している。

 今月PLoSOneに発表された研究によると、カリマンタンの村人は、少なくとも年に750頭のオランウータンを殺していると認めた。一部は作物保護のために、一部は村人が動物は危険と考えるために殺されている。

 Orang-utans killed for 'pest control'(AP),smh,11.24

 折しもイギリスのリスク分析会社・Maplecroftが11月24日に発表した”Deforestation Index 2012”(2012年森林破壊指数)によると、インドネシアはナイジェリアに次ぐ世界第二位の森林破壊リスク国とされている。この分析は、世界の森林の主要なリスクの一つは、EUのバイオ燃料市場の拡大と世界食料需要の増大によって熱帯地域全体で年率9%で増えているパームオイルの生産であるという。森林破壊指数二位のインドネシアは世界最大のパームオイル生産国だ。インドネシアの森林破壊の16%がパームオイルに帰せられる。

 インドネシア政府は、多くの多国籍企業がインドネシア最大規模のパームオイル生産者との関係を切った後(参照:ユニリーバ 森林・泥炭地破壊でインドネシア最大のパームオイル企業からの原料調達を停止ユニリーバ インドネシア企業からのパームオイル調達停止第二弾 森林破壊の疑いユニリーバ インドネシア企業からのパームオイル調達停止第二弾 森林破壊の疑いバーガー・キング インドネシア熱帯雨林を破壊するSinar Mas Groupからのパームオイル調達を停止)、新たな森林譲与(開発免許)を2年間禁止した。しかし、これはパームオイル生産者の多国、特にリビア、ガボン、ガーナなど西アフリカ諸国への進出を促した。これら進出先の森林破壊リスクを高める結果になりそうだという。

 Maplecroftは、「森林破壊は大気中のCO2のレベル上昇、従って気候変動に寄与する基本的要因をなす。森林破壊と森林退化は年々の温室効果ガス排出に最大20%寄与していると推定される」と言う。

 Highest rates of deforestation happening in emerging economies of Nigeria, Indonesia and Brazil, while China and the USA are lowest – Maplecroft index,Maplecroft,11.11.24

 パームオイルは野生動物のみならず、人類の生存も脅かす。

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