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EU:動物副産物規則に採択の見通し

農業情報研究所(WAPIC)

02.9.19

 主として外食産業残飯の扱いをめぐる対立により採択が遅れていたEUの動物副産物規則(参照:EU:農相理事会、動物副産物規則を採択)が最終的に採択される見通しが出てきた。欧州議会と閣僚理事会の調停委員会が合意に達したためである(Council of the EU: Animal by-products not intended for human consumption - Agreement on health rules,02.9.12)。

 この規則は、人間の消費に向けられない動物副産物に関する保健ルールを定めるもので、とりわけ狂牛病感染防止に重要な役割を演じるとされている。規則は、動物と人間の健康リスクを予防するために、動物副産物の収集・輸送・貯蔵・取り扱い・加工・利用・廃棄のルールを定める。動物死体や品質が劣化した動物副産物の「フード・チェーン」への投入は禁止される。動物飼料生産のために使用が許される動物副産物は、検査ののちに人間の消費に適すると認められたものだけである。さらに、動物副産物の代替利用法または廃棄の方法(焼却、混合焼却、セメント化、埋葬・埋立、バイオガス、コンポスト、肉骨粉の肥料としての利用など)に関して、コントロールとトレーサビリティを強化し、動物副産物とその派生品のEU域外からの輸入の条件も定める。

 この規則の採択の最大の障害となっていたのは、残飯の扱いである。欧州委員会は、残飯による家畜飼育は口蹄疫や古典的豚コレラのような家畜病の伝達のリスクを生むとして、その禁止を提案したが、欧州議会は豚や鳥の飼料への残飯使用の継続にこだわり、残飯処理の安全性に関する別の規則を提案するように要求していた(EU:残飯給餌禁止に欧州議会が反対、動物副産物規則採択は延期,02.3.15)。今回の妥協の内容は次のようなものである。

 ・動物飼料への残飯利用の禁止に、限定付きの例外措置を設ける。すなわち、当該EU構成国が適切なコントロール・システムを設け、人間または動物の健康へのリスクを大きく高めるのでなけらば、2002年11月1日から最大限4年間の利用を認める。

 ・残飯に関して導入されるべき移行措置はこの委員会により採択されるものとし、欧州委員会は新たな規則案を議会及び理事会に提出する義務を負わない。

 他方、欧州委員会は、あり得る汚染のコントロールのために、生物廃棄物、特に残飯の利用・回収・リサイクル・廃棄に関するルールを定める指令案を2004年末までに提出ことを引き受けた。

 この合意が欧州議会、閣僚理事会で確認されれば、規則案の最終的採択への道が開ける。