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タイ:禁止化学農薬・肥料の使用取締り強化へ

農業情報研究所WAPIC)

03.6.10

 「バンコク・ポスト」紙によると、タイ農業省は、来年を食品安全年にするという首相の目標に応え、食品安全と衛生コントロールのシステムに48億バーツ(約140億円)を支出する。

 2005年までに、32万5千の果実・野菜農家、8万5千500の畜産農家、3万の養殖農家が消費者・環境保護に焦点を当てた持続的農業を意味する「グッド・アグリカルチャラル・プラクティス(良好農業慣行)」の要件を満たすようにする。この措置の背後には、農業における農薬・化学物質の乱用が眼にあまり、多大の健康被害を引き起こしているという認識があるようだ。

 ネウィン・チッチョープ副首相は、「保健統計によると、癌・心臓病・糖尿病患者が急増している。これは食品安全・衛生基準の実施に国が失敗した結果だ」と語ったという。また、タイは農産物・食品中の毒物残留によって引き起こされた健康問題に対処するために、毎年300億バーツを失っているという。副首相は、有害化学物質による環境汚染への対処のために、政府は巨額を払わねばならないとも言う。

 農業省主任は、禁止農薬・肥料の不法な使用の取り締まりは失敗し、有機農業促進のキャンペーンもほとんど注目を得られていないことを認めたうえで、省は禁止毒物の排除に焦点を当てた食品安全政策に20億バーツが必要だと言っている。

 これらの農業用有害化学物質の今年の輸入は、昨年の3万6千トンから4万トンに増えると予想されている。政府は94のタイプの化学農薬・肥料を禁止、さらに12の有毒化学物質も近く禁止される。しかし、これらの有害化学物質の不法な使用は、農民が人間と環境への潜在的脅威を無視しているために、なお蔓延しているのだという。

 農産商品・食品基準局のディレクターによると、過去10年に有毒化学物質の輸入は119%増加、化学物質汚染食品・農産物により病気になる人の数は6年間で148%増加した。過去には、当局はタイの消費者が何を食べているかを気にせず、専ら輸出商品の品質に関心を注いできたが、今後は国内市場で販売されるものにも国際基準を適用することで品質基準を引き上げるのが目標だと言う。

 状況の改善には、農民の意識の向上と違法物質輸入の有効な取り締まりが不可欠なようだ。

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