米国:子牛への未承認成長促進ホルモン使用が発覚、FDAが調査開始を発表

農業情報研究所

04.4.5

 米国の食品医薬局(FDA)と農務省(USDA)が子牛肉用に屠殺される若齢牛への成長ホルモンの違法使用の調査に乗り出した(FDA Responds to the Use of Illegal Hormone Implants In Veal Calves,4.2)。ウィスコンシンの屠殺場で違法使用が発覚したためだ。USDA食品安全検査局(FSIS)の獣医が屠殺に出された三つのグループの子牛の耳に不審物が埋め込まれているのを発見した。調査したところ、埋め込まれていたのは、血液中にホルモンをゆっくりと放出するためのものだった。

 FDAは、「子牛肉用子牛」には子牛肉に加工することを目的とするか、加工される未反芻期の子牛のすべて―品種を問わず―が含まれ、このような子牛に埋め込む承認された成長ホルモンはない、治療以外の目的での成長ホルモン利用は違法だと言う。成長ホルモンは成牛には使用されているが、FDAは、生後12週間から23週間で屠殺される子牛では代謝が異なり、体外排出速度が遅いために肉に残留する恐れがあると考えている。

 問題のホルモンは二つの男性ホルモン(テストステローン、トレンボーン)と三つの女性ホルモン(プロゲステローン、エストラジオール、ゼラノール)で、EUは88年以来、これらにメレンゲストロールを加えた六つのホルモンの成長促進のための使用を禁止、これを使用する米国やカナダからの牛肉輸入も禁じた。97年、この措置を衛生植物検疫(SPS)協定違反と訴えた米国・カナダの主張をWTOパネルが支持、EU諸国は報復措置を受けた。だが、1999年、2000年に公衆衛生関連獣医学措置科学委員会(SCVPH)が六つのホルモンのどれについても1日当たりの許容摂取量は設定できない、エストラジオールについては完全な発癌性が認められる(利用可能なデータではリスクの数量的評価はできない)と結論、なお禁止を解いていない。FDAも、これらホルモンの大量摂取は有害と認めている。

 違法使用の発覚を契機に、FDAとUSDAは、このような違法使用がどの程度広がっているか調査する。消費者は当面心配するには及ばないが、違法使用がどの程度広がっているか確かなことは分からないという。FDAは同時に、このような埋め込みを使用した子牛肉生産者に、成牛の場合と同様な手続に従うように要請するガイドラインを出した。この場合、子牛は埋め込み後63日で屠殺できる。ただし、このガイドラインは、埋め込みの追加使用がない6月6日以前に屠殺される子牛にのみ適用される。これに従わない場合には、FDAは警告文書を出すか、法的行動に訴えることができる。

 AP通信の報道では、アメリカ子牛肉協会のポール・ステイトン常務理事は、子牛に追加される肉は30ドルから40ドルの追加報酬をもたらすために、一部生産者がホルモンに頼っていると語っている。典型的には1頭650ドルで、ホルモンなしで育てられた子牛の利益は10ドルから20ドルという。彼によれば、毎年70万頭の子牛肉用子牛が屠殺されるが、どれほどホルモンが含まれるかは推測の域を出ない。典型的には14-15週間のときに与えられ、20週で屠殺される。

 BSEに加え、米国牛肉の安全性への不安要因がまた一つ加わった。

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