米新通商代表 農産物関税大幅引き下げがなければドーハ・ラウンドは死デススパイラルに

農業情報研究所(WAPIC)

06.6.10

  米国議会上院は8日、ポートマン米通商代表の後任としてシュワブ新通商代表を承認したが、新代表はその翌日、Financial Times紙に対し、農産物輸出国にほとんど市場を開放しない”低アルコールビール”は米国議会が飲まないだろう、米国の要求する大幅関税引き下げを他国が飲むのでなければ、ドーハ・ラウンドは”デススパイラル(死の渦巻き)”に向かうほかないと語ったという。

 US not prepared to accept ‘Doha lite’,FT.com,6.10
 http://news.ft.com/cms/s/ed70bf36-f804-11da-9481-0000779e2340.html

 米国は農産物関税の平均67%の引き下げを提案してきた。有力途上国グループのG20とEUが提案する平均引き下げ率はそれぞれ54%と39%だ。マンデルソンEU通商担当委員は最近、私的にだが、40%から50%までは譲ると示唆した。しかし、シュワブ新通商代表は、54%以下の削減での妥協はあり得ないと示唆している。

 パスカル・ラミーWTO事務局長は、今年中のドーハ・ラウンド終結を目指し、農産物・工業製品の関税と補助金の削減方式に関する合意期限を6月末に設定した。月末にはそのための閣僚会合も予定されている。米議会が政府に与えたファスト・トラック貿易促進権限法の期限が切れる来年7月までに議会の一括承認が得られなければ、交渉結果は何の意味もたなくなるからだ。この期に及んでの新通商代表のこの発言は、まさにドーハ・ラウンドが「死の渦巻き」のふちにまできていることを示す。この渦巻きから逃れるには、ファスト・トラック権限の期限を延長するほかない。

 同紙によると、一部米議員は、ドーハ協定承認のために期限を一時的に延長することも可能と示唆したが、シュワブ代表はそれに頼るのは危険だ、そのためにどれほどの時間がかかるか分からないと言う。強い影響力をもつ共和党・グラスリー上院財務委員会委員長も、「我々は10年ごとにリンゴを一かじりしているだけだ、最小限のアプローチに無駄な時間を使いたくない」と言う。 

 シュワブ代表は、ドーハ・ラウンドの成否にかかわらず二国間協定の追求を続けるとも語ったという。

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