農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2013年8月23日

TPP交渉 タバコ規制で米議会・業界が巻き返し 各国保健規制を骨抜きにする米政府新提案

 フィナンシャル・タイムズ紙によると、フローマン米国通商代表が22日にブルネイで始まった環太平洋パートナーシップ協定(TPPA)交渉で、タバコに関する新たな提案を行った。

  米国のプランには貿易ルールを侵犯することなく市民の健康を保護する国の権利が含まれるが、タバコ規制をその例外と認める基準も付け加えられている。世界中で反タバコ運動を展開するグループは、米国案では、多国籍タバコ企業などによる厳しいタバコ規制法への法的挑戦(異議申し立て)を却下する道が開けない、オバマ政権下で以前に採択された多国籍企業ともっと強硬に対決するスタンスが変わってしまった、と批判している。

 こうした態度変更は、産業とタバコ議員の強力な巻き返しの結果だ。フローマン代表は声明で、この提案は議会と保健・農業者団体との”徹底的協議”の結果であり、「貿易交渉においてタバコをめぐる公衆衛生問題に特別に初めて取り組むものだ・・・・、他方で農産物除外の先例を創らない包括的協定交渉という貿易政策目標に沿うものでもある」と、この提案を正当化している。

 米国は、国のタバコ規制が法的挑戦を受けたときの保健当局のサミットを義務付ける。しかし、反タバコグループは、これでは国に対する訴訟を防ぐには不十分、ある場合には、特に低開発のTPP諸国では、対抗する手段がないと主張している。

 Tobacco causes backlash in TPP trade talks,FT.com,13.8.23
 Tabcco proposal for TPP trade talks sparks bacclassh,Financial Times,13.8.23,p.2

 これはタバコだけの問題だろうか。先日述べたように、米国政府にはいまだに交渉権限がない(米国ファスト・トラック法制定が難航 米政府に通商交渉権限なし 幽霊相手にTPP交渉か)。米政府は議員や業界の意向に抵触するような提案は決してできないし、同様な交渉相手国からの提案も決して受け入れることができない。そんなことをすれば、議会は交渉結果を受け入れないだけでなく、交渉権限の授与自体も拒むだろう。各国の交渉相手は事実上、米政府ではなく、米議会・議員なのだ。タバコ問題は、それを象徴する一事例にすぎない。

 そんな米国交渉官を相手にまじめに交渉する各国交渉官、そんな交渉を一大事のごとく伝えるマスコミ、彼らの気が知れない。